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築100年古民家のはり「三線」に 国頭の宮里さん、8年間で10丁制作「粘りのある音」 沖縄


築100年古民家のはり「三線」に 国頭の宮里さん、8年間で10丁制作「粘りのある音」 沖縄 9月に完成した三線を弾く宮里博さん=10月19日、国頭村宇良の自宅
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 【国頭】宮里博さん(85)=国頭村宇良=は自宅の「琉球古典音楽野村流保存会宮里博教室」で唄三線を指導する傍ら、地謡として地域行事に参加するなど長年活躍してきた。新型コロナウイルスなどの影響で三線教室は現在、活動休講状況にある。約8年前から三線制作に興味を持ち、これまで10丁を制作した。うち3丁は県外の親戚などに送り、現在7丁が自宅に飾られ、時々弾いて大事に保管されている。

 三線の棹(さお)や天と呼ばれる部分は、クロキやサクラを材料に使用した。宮里さんの親が建てた築約100年の住宅が老朽化で取り壊された際に、はりに使用されていた材料で、沖縄の方言でスルミチと呼ばれる木材も利用したという。

 10丁目の三線は昨年3月から手掛けて約1年半の長期間、作業を行い今年9月に完成した。

今年9月に完成した三線
今年9月に完成した三線

 宮里さんは中学時代から山仕事を手伝い、そのまま山仕事やミカン栽培に従事した。やんばるの森の木々を見る機会も多く、木の名称や特徴、性質などをよく知り、その木で三線を作ってみたかったという。10丁目は自身の山から切り取ってきたダシチャ(シマミサオノキ)と呼ばれる木も使った。堅く、弾力と粘りがあり、古くからイノシシ猟のわなとして利用されてきたと言われる。今回は自身の山から直径約15センチの木を、長さ90センチに切って使用した。

 宮里さんは「これまで多くの三線を弾いてきたが、今まで味わったことのない粘りのある音を出し、音の余韻が長く残る気がする。今後も弾いていくうちに、どう音が変わっていくかとても楽しみである。一度は、この木で作りたかったのがやっと完成した」と、出来上がった三線を奏でながら笑顔で話した。

 (新城高仁通信員)