人間国宝3氏に聞く 組踊公演「清ら星たち」見どころ 12月23、24日 琉球新報ホール 沖縄


人間国宝3氏に聞く 組踊公演「清ら星たち」見どころ 12月23、24日 琉球新報ホール 沖縄 「万歳敵討」監修の親泊興照氏(右端)指導の下、稽古に汗を流す「伝統芸能を生きる『清ら星たち』」の出演者=11日、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 琉球新報創刊130年記念組踊公演・伝統芸能を生きる「清(ちゅ)ら星たち」が23、24の両日、那覇市の琉球新報ホールで開かれる。写真集「清ら星―伝統組踊の立方」発刊も記念した公演では2日間で組踊4題を上演し、写真集に登場した実演家らが伝統芸能の魅力を伝える。公演の意義や見どころを監修・地謡指導に当たる人間国宝・宮城能鳳、西江喜春、中村一雄の3氏に聞いた。(聞き手 藤村謙吾、田吹遥子)

地謡指導(手水の縁、執心鐘入)
 西江喜春

立方、地謡共に安定

―地謡指導を務め、出演もする「執心鐘入」では聞かせどころの一つで、女が鬼女に変わる場面での「散山節」を歌う。他にどのような聞きどころがあるか。

 「『執心鐘入』は、最初の中城若松と宿の女が言葉を交わす場面で、若松の唱えに対する女の心情が『干瀬節』で表現される。中でも最初の『干瀬節』は、直前の唱えの音高につられやすく、きれいに歌い出すことは並大抵のことではない。それを難なくこなす地謡に期待してほしい」

―「手水の縁」を、どのように仕上げたいか。

 「忍びの場の『仲風節』と『述懐節』を、どう聞かせるかが問われる作品だ。今回仲風は、声量もあり柔らかな歌声の地謡に任せ、続く述懐は声質が似ている地謡につなげようと考えている。こちらの『散山節』は美声の地謡に歌わせたい」

―出演する中堅若手の立方をどう見ているか。

 「立方、地謡共に安定しているメンバーなので、観客にも安心して見ていただけるだろう。役もそれぞれに合っていると思う。写真集『清ら星』は、大城洋平氏の写真が非常に素晴らしい。本作は男役の写真が多いので、次は女役バージョンも見てみたい」


 にしえ・きしゅん 1940年生まれ、伊平屋村出身。安冨祖流師範・宮里春行に師事。2001年国指定重要無形文化財「組踊」(総合認定)、09年「琉球舞踊」(同)保持者。11年「組踊音楽歌三線」保持者(各個認定)=人間国宝。

監修(手水の縁)
宮城能鳳

若手と中堅 実績披露

―若手や中堅の実演家が登場した写真集「清ら星」が出版され、公演も開催される。

 「若手や中堅たちのこれまでの演技の実績が(写真集や公演で)披露される。先達の先生方の技を今見たいと思っても、そのような資料は残っていない。若い頃演じたことが広く公表されて残ることは素晴らしい」

―公演では23日上演の「手水の縁」を監修する。

 「朝薫5番に勝るとも劣らないと言われるほどの素晴らしい作品だ。組踊唯一の恋愛ものだ」

 「演者には自然体で演じてほしいと思っている。組踊では悲しい場面でも悲しそうな表情をするなど、表情を変えてはいけない。涙を流したりオーバーリアクションをしたりせずに、抑制の利いた演技をするよう伝えていきたい」

―「手水の縁」の見どころは。

 「たくさんあるが、2人の出会いの場におけるセリフや、忍びながらの再会の場面、処刑の場面での山戸が嘆願するセリフも見どころだ。名文や名曲で構成されている組踊で、地謡の憧れの舞台とも聞く。歌も含めて聞きどころが多い作品だ」


 みやぎ・のうほう 1938年生まれ、佐敷町(現・南城市)出身。53年に玉城源造、62年に宮城能造に師事。2006年国指定重要無形文化財「組踊立方」保持者(各個認定)=人間国宝。09年「琉球舞踊」保持者(総合認定)。

地謡指導(二童敵討、万歳敵討)
中村一雄

スターの誕生を期待

―あだ討ち物2題の地謡指導を務める。それぞれの聞きどころはどこか。

 「『二童敵討』では、鶴松と亀千代の母が登場する際に歌う『仲村渠節』が、舞台の成否につながるポイントの一つだ。後には『散山節』『伊野波節』と名曲が続く。親子の別れが描かれる場面での最初の曲で、地謡には立方のせりふとも呼応し、彼らの胸の内を表現することが求められる。『万歳敵討』には、広く親しまれている舞踊『高平良万歳』の元となった歌と踊りが、後半の浜下りの場面で登場する。両作とも、分かりやすい話の筋で、楽しんでもらえるだろう」

―「清ら星」に登場した中堅若手が出演する。

 「主役級のメンバーがそろった。脇役でも、自分が主役という気持ちで演じてほしい。このメンバーからスターが出ることを願う」

―本番に向けて。

 「学校などで組踊公演をする際、『おかしいところは笑い、面白いところは拍手しなさい』と教えている。七目付のときなど、ときに歌舞伎のようなかけ声が起きてもいい。客席の反応があり、立方も手応えを感じる。新報ホールならではの舞台を、観客と一緒に作れればと思う」


 なかむら・いちお 1946年生まれ、具志川村(現・久米島町)出身。野村流演奏家・野村義雄、知念秀雄師事。国指定重文(総合認定)は2001年「組踊」、17年「琉球舞踊」認定。19年「琉球古典音楽」保持者(各個認定)=人間国宝。

公演情報

【日時・演目】12月23日(土)「二童敵討」「手水の縁」、24日(日)「執心鐘入」「万歳敵討」※午後5時開演

【会場】琉球新報ホール(那覇市泉崎1の10の3)※地図はこちら

【入場券】前売り3千円、当日3500円

【プレイガイド】デパートリウボウ、コープあぷれ、ファミリーマート(イープラス)、ローソン(Lコード83688)、琉球新報中部支社・北部支社

【問い合わせ】琉球新報社統合広告事業局、電話098(865)5255(平日午前10時~午後5時)

主催 琉球新報社
共催 沖縄芸能連盟
特別協賛 医療法人陽心会
協力 伝統組踊保存会
後援 沖縄県、那覇市、沖縄テレビ、ラジオ沖縄、沖縄県文化振興会

23日 演目・出演者

1、組踊「二童敵討」監修=眞境名正憲、地謡指導=中村一雄

〈立方〉あまおへ=玉城盛義、鶴松=佐辺良和、亀千代=田口博章、母=宮城茂雄、供1=平田智之、供2=宇座仁一、供3=金城真次、きょうちゃこ持ち=森山和人

〈地謡〉三線=島袋功、仲村渠達也、徳田泰樹、笛=知念久光、胡弓=崎原盛勇、箏=宮城秀子、太鼓=國場秀治

2、組踊「手水の縁」監修=宮城能鳳、地謡指導=西江喜春

〈立方〉山戸=東江裕吉、玉津=新垣悟、志喜屋の大屋子=石川直也、山口の西掟=嘉数道彦、門番=上原崇弘、後見=森山康人

〈地謡〉三線=照喜名進、照喜名朝國、上原睦三、大城貴幸、笛=宮城英夫、胡弓=運天伊作、箏=上地律子、太鼓=國場秀治

24日 演目・出演者

1、組踊「執心鐘入」監修=島袋光晴、地謡指導=西江喜春

〈立方〉中城若松=金城真次、宿の女=宮城茂雄、座主=石川直也、小僧1=嘉数道彦、小僧2=田口博章、小僧3=髙井賢太郎

〈地謡〉三線=西江喜春、花城英樹、玉城和樹、平良大、笛=大湾清之、胡弓=川平賀道、箏=安慶名久美子、太鼓=宇座嘉憲

2、組踊「万歳敵討」監修=親泊興照、地謡指導=中村一雄

〈立方〉謝名の子=平田智之、慶雲=宇座仁一、高平良御鎖=親泊久玄、高平良妻=嘉数道彦、高平良娘=佐辺良和、列女1=髙井賢太郎、列女2=金城真次、供1=石川直也、供2=田口博章、道行人=玉城盛義

〈地謡〉三線=中村一雄、仲宗根盛次、新垣和則、笛=座波洋平、胡弓=新城清弘、箏=野里葉子、太鼓=宇座嘉憲

写真集「清ら星」県内書店で発売

 琉球新報紙面で好評を博した連載「清ら星―伝統組踊の立方」(2021年1月~22年9月)に登場し、伝統組踊の中軸を担う期待の実演家の写真集。連載で掲載されなかった写真や組踊に関する資料なども盛り込んだ。B5判・84ページ、定価2970円(税込み)。県内書店で発売中。

大城氏写真展 21日から開催

 「清ら星」の撮影を担当した舞台写真家・大城洋平氏の写真展を琉球新報社2階ギャラリーで開く。21日(木)~24日(日)の午前10時~午後6時。入場無料。