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<書評>女たちが語る歴史 下 沖縄篇 うない〈女性〉の記録 暮らし通して知る近代史


社会
<書評>女たちが語る歴史 下 沖縄篇 うない〈女性〉の記録 暮らし通して知る近代史 『女たちが語る歴史 下 沖縄篇うない<女性>の記録』川田文子著 「戦争と性」編集室・2,420円
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 川田文子さんと言えば、日本軍「慰安婦」問題を掘り起こし、沖縄における「慰安婦」研究のきっかけをつくった方だと想起される人は多いだろう。しかし、彼女の沖縄とのつながりは、それだけではなかった。日本復帰翌年から沖縄に通い、明治生まれの女性たちの生の声を掘り起こした貴重な証言を本書に記録していたのだ。メインとなる場所は与那国、石垣、竹富、宮古島。沖縄の中でもマイノリティの地域であり、本書は人々のくらしを通して沖縄近代史を補完する役割を担っている。

 「毛遊びー(モウアシビー)」(若い男女が野原や浜辺で歌い踊り遊ぶ)のインタビューに初々しく恥じらいに頬を染め、声をはずませて応えた女性。また親に反対されながらそこで親しくなった男性との結婚を誇った女性もいた。近代教育の流入とともにこの慣習が「蛮風」として規制されたが、琉球国時代から人頭税に苦しめられた「農民」層にとって、「毛遊びー」は農作業や機織りの呪縛から解放される大切な時間だった。

 織り上げた貢納布の染め、織り、量などの検査は厳格だった。かろうじて人頭税を免れた明治22年生まれの女性は、御用布を納める母や叔母たちに付いて検査場に行った際、検査に合格した母が役人の前で泣き伏した姿を覚えていた。不合格だと穀物での代納や入牢、村払いなどの厳罰が待っていたからだ。 また、人頭税廃止に尽力した宮古の平良真牛を大叔父にもつ女性は、当時の状況について大叔父からよく聞かされたが、その仕組みや貢納については父親から詳しく教わった。なかには、検査官が職務を利用して織女を玩弄したり妊娠させたりするケースがある一方で、あえて身を任せた女性たちもいたという逸話もあった。

 本書では、石垣島を中心に人々の移動による「新村興亡」が資料的価値を高め、戦争に翻弄された辻遊郭の女性や、満州に移民したノロの生活などにも言及されている。終生を、歴史的に等閑視された女性たちに光を当ててきた著者。北海道や東北などの女性たちを記録した上巻も合わせておすすめしたい。

 (宮城晴美・沖縄女性史家)


 かわた・ふみこ 1943年茨城県生まれ。日本の慰安婦問題をライフワークとし、元慰安婦らが日本政府に戦後補償を求めた裁判を支援。著著に「赤瓦の家-朝鮮から来た従軍慰安婦」や「『慰安婦』問題が問うてきたこと」など多数。