那覇の中心にある大衆劇場 那覇市ぶんかテンブス館「木曜芸能公演」


那覇の中心にある大衆劇場 那覇市ぶんかテンブス館「木曜芸能公演」 沖縄の言葉で「おへそ」を意味する「テンブス」。その名前に由来する、国際通りの中心にある「テンブスホール(那覇市ぶんかテンブス館4階)」で、毎週木曜日19時に開演するのが「木曜芸能公演」。さまざまなジャンルの演目が行われている中、琉球王朝から受け継がれる三つの技芸を披露する「ふくらしや」公演を中心に取材を進めた=2023年10月5日 那覇市・テンブスホール 写真・村山望 ※「ふくらしや」は「かぎやで風」の歌詞にあり、喜びやうれしさを表す言葉
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

ジャンル問わず気軽に鑑賞

伝統芸能・クラシック・ジャズ・ポップス・落語・お笑い・舞台劇・プロレスなど、エンターテインメントのさまざまなジャンルの公演を開催しているテンブスホール。毎週行われている「木曜芸能公演」は、「1時間程度で気軽に鑑賞できる」と好評だ。入場料金が割安(一般1500円)なのも、人気の理由だろう。「ふくらしや」出演者と関係者の思いを聞いた。

沖縄が誇る伝統技芸「歌三線・琉球舞踊・空手」を披露する「ふくらしや」公演。歌三線による「かぎやで風」で祝宴ムードに幕開けし、柳や梅の花の枝を持ちながら華やかに舞う「柳(やなじ)」、上地流空手道最高峰の型「三十六(さんせいりゅう)」へと続く。

スクリーンに演目名とコメントが映し出され、照明の切り替えで進行する流れで、詳しく解説する場面はない。

花笠をかぶりつらい恋を表現する舞踊「伊野波節(ぬふぁぶし)」、「釵(さい)」という武器を使った上地流空手、満たされない女心を所作で演じる舞踊「諸屯(しゅどぅん)」と続き、全演目が終了。色鮮やかな紅型に身を包んだ舞踊家たちの優雅な舞いと迫力あふれる空手の演武が交互に披露され、その対比と響き渡る歌三線の音色に魅了された。琉球技芸の世界に没入できる約1時間であった。

舞台と客席が近いホール

4カ月に1回定期的に開催される「ふくらしや」は、演目そのままに演者が替わることが特徴的だ。見どころを聞いた。

●琉球古典音楽 安冨祖流絃聲会 左から竹田祐規さん、照喜名朝國さん
琉球古典音楽 安冨祖流絃聲会 左から竹田祐規さん、照喜名朝國さん

「三線のみの演奏で器楽伴奏は入れず、舞踊家と一対一で舞台に上がる形式は本公演ならではです。ぜひ足をお運びください」(竹田さん)

「シンプルな演出で技量が試され、勉強になる公演です。受け継がれている伝統芸能に触れると、明日から頑張ろうと元気が出るはずです」(照喜名さん)

「空手の間にやわらかな琉舞が入るので、見て良かったとより思っていただけるのではないでしょうか。気軽にご来場ください」(竹波さん)

●上地流空手道 琉球古武道琉志会 安謝修武館 左から竹波優理遼さん、嶽元眞志さん
上地流空手道 琉球古武道琉志会 安謝修武館 左から竹波優理遼さん、嶽元眞志さん

「沖縄の文化に触れる機会は普段は少ないと思いますので、鑑賞して素晴らしさを感じてください」(嶽元さん)

「琉球舞踊の中でもヘビーな3曲を披露していますが、初心者でも見やすいという声を聞き安心しました。仕事帰りにでも楽しんでいただけたらうれしいです」(西村さん)

「琉球古典音楽と空手、そして琉球舞踊は沖縄文化の礎だと思っています。それが1時間に凝縮された舞台は見応えがありますので、ご堪能ください」(喜屋武さん)

「舞台と客席の距離が近いのがテンブスホールの特徴です。踊っている息遣いが伝わると緊張しますが、それを楽しむのもありだと思っています。紅型の柄や道具も近くで見て、お楽しみください」(佐渡山さん)

何でもありの会場に

「琉球の古典芸能をコンパクトにして幅広い年齢層の方、そして外国人の方にも気軽に楽しんでいただけるのが『ふくらしや』です」と話すのは、那覇市ぶんかテンブス館副館長の渡口宣一郎さん。「バトンをつなぐ」というコンセプトの下、演目そのままに演じ手を替える方式にしたそうだ。

●琉球舞踊 左から西村綾織さん(玉城流喜納喜利の会)、喜屋武愛香さん(真境名本流英美の会)、佐渡山也子さん(島袋流千尋会)
琉球舞踊 左から西村綾織さん(玉城流喜納喜利の会)、喜屋武愛香さん(真境名本流英美の会)、佐渡山也子さん(島袋流千尋会)

「流派が違う場合もありますし演じ手が替わることで、毎公演楽しんでいただけると思います。歌と演奏はマイクをあまり通さず、生音に空気感を足しています」とこだわりも教えてくれた。琉球の伝統を重んじる思いも込められているようだ。

本公演を含む「木曜芸能公演」は今後も進化を続けそう。

「ウチナー芝居や組踊など、何でもありの大衆劇場です。若手育成につながったり実験的な内容を試みたりなど新しい企画も応援します。那覇の真ん中で毎週やっていますので、気軽にお越しください」と渡口さん。

沖縄発エンタメがグッと身近になりそうだ。

(饒波貴子)

テンブスホール【木曜芸能公演】

開場18時30分/開演19時

2月1日「ふくらしや」(琉球古典音楽・舞踊・空手)

2月8日「ゆいゆいシスターズinテンブス」(沖縄民謡)

会場:那覇市牧志・那覇市ぶんかテンブス館4階
料金:一般1500円/高校生1130円/小中学生・シニア※750円(※那覇市在住65歳以上対象・身分証明書を持参)
問い合わせ:TEL098-868-7810

(2024年1月18日付 週刊レキオ掲載)