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組踊研修、男性のみ 「女性に学ぶ機会を」 公演が先行、新たな風期待 <新時代・国立劇場おきなわ20年>3


組踊研修、男性のみ 「女性に学ぶ機会を」 公演が先行、新たな風期待 <新時代・国立劇場おきなわ20年>3 女性のみで「執心鐘入」を熱演する宮城流朱之会。当時朱之会会主だった古謝弘子が上演にこぎ着けた=2010年4月、国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 中心的な演者を輩出してきた国立劇場おきなわの「組踊伝承者養成研修」。現研修生に当たる第七期の応募資格の一つに「中学校卒業以上で原則として30歳未満の男子」があり、研修への応募を男性に限定する。公演への出演機会も少ない女性演者たちは、組踊の研究や上演の機会を自らで創出し、つないできた。

 男性に限定した応募資格について、国立劇場おきなわは「芸能分野の実情等を考慮し、研修期ごとに定める」とし「第七期を募集する際には、第七期組踊研修生選考委員会が開催されて研修生募集の細目等が定められ募集を行った」と回答した。第一期では箏のみ女性も応募可能だった。今の第七期の研修では女性からの応募もあったが、資格外とされた。

 組踊や宮廷舞踊は士族の男子のみに許されていた歴史がある。琉球王朝崩壊以降は女性にも徐々に浸透。特に男性舞踊家が不足した戦後は、女性舞踊家が組踊の女役や若衆役を務めていた。だが1972年、組踊が国の重要無形文化財に指定される際に従来の継承の形を重視し、保持者の要件に「女方とする」を加え、男性に限定した。

 朱日流家元の古謝弘子は18歳で師匠の宮城美能留から組踊を習い、継承している。古謝によると、劇場の建設が決まった頃、芸能研究者の三隅治雄氏から「今後30年は女性も一緒にどうか」と声掛けがあったという。だが、芸能研究者の宜保榮治郎氏が「最後のとりで」と断ったという。古謝は「伝統を守ることは大事」と理解を示した上で「でも女性はやるな、ではない」と強調する。

 古謝は、宮城流朱之会として2010年4月に同劇場で女性だけの「執心鐘入」を披露。11月には劇場の研究公演として、佐藤太圭子演出で女性のみの組踊が上演された。古謝は「女役や若衆は女性が担うなど、女性が出演する機会をつくって」と訴える。

 12年には、県立芸術大学大学院で組踊を学んだ女性たちが立方のみで「女流組踊研究会めばな」を発足させた。当初9人だったメンバーは現在17人に。「100年先に組踊をつなぎたい」との思いで、主に親子向けの公演を続けてきた。メンバーは師範や教師となり、各研究所の子どもたちを指導する機会も増えた。代表の山城亜矢乃は「女性の先生でも組踊を学ぶことができれば、弟子たちに組踊を教えることもできる」と次世代も見据える。「今の研修とは別でもいい。男女問わず組踊を学ぶ機会があれば」と求めた。

 13日の20周年記念公演で上演された新作組踊「祝寿の舞」(金城真次作、演出)では「めばな」から4人の女性立方が起用された。山城は「とても喜ばしい」と笑顔。劇場に新たな風が吹くことを期待する。

 (田吹遥子)