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<書評>『沖縄のもあい大研究』 時代と共に変わる意味合い


<書評>『沖縄のもあい大研究』 時代と共に変わる意味合い 『沖縄のもあい大研究』平野(野元)美佐著 ボーダーインク・2420円
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 「モアイ」の良さとはなんだろうか。その言葉は知っていたが、私も両親もやっていない。なんとなく居酒屋で飲み食いしている様子を思い浮かべるが、それだけではないらしい。本書は、沖縄で続く模合(もあい)文化に惹(ひ)かれた著者が、模合の歴史を紐解(ひもと)き、あちこちで見聞きしたエピソードをまとめた一冊だ。3部構成となっており、歴史編・現代編・未来編と場面が変わっていく。さらに小見出しにはキャッチーなタイトルがついており、コラム風で読みやすい。

 第1部では、共同体のゆいまーる(助け合い)から沖縄の模合が始まったことや、戦後は事業を始める資金、子どもを進学させるために模合金が使われていたことなどが述べられる。  第2部では、著者が実際に沖縄で見聞きしたエピソードを中心に模合が語られる。親睦模合が主流になった現代と戦前・戦後の模合を対比させながら、現代において模合を続ける人たちが模合に何を求めているのかが分析されている。しかしながら、模合の意味合いは、人々の生き方に合わせて変わってきているのではないか。

 本書の終わりで、著者は模合文化の継承を若者に託しているが、若い世代の中には「模合=お金」のイメージが強く、そこから生まれる金銭トラブルや人間関係のもつれを連想する人も多い。学生時代からスマホが当たり前だった世代は、卒業後も友だちと繋(つな)がる方法はたくさんある。また、10代、20代でコロナ禍を経験しているため、模合のような定期的に集まるという感覚も、上の世代とギャップがあるかもしれない。

 そういえば私は最近、高校の同級生とバレーボールチームを結成し、定期的に集まっている。模合仲間に対し、上の世代が思っている特別な仲間意識は、スポーツや共通の趣味などでも生まれることはあるだろう。

 琉球王国時代から残る「模合」という言葉は、時代と共にその形を変化させながら暮らしの中にあり続ける。

 (リサーチャー・稲福政志)


 ひらの(のもと)みさ 1969年大阪府生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教員。専門は文化人類学、地域研究。主な著書に「アフリカ都市の民族誌」。