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<書評>『資料集 沖縄青年同盟』 続く同化と異化による支配


<書評>『資料集 沖縄青年同盟』 続く同化と異化による支配 『資料集 沖縄青年同盟』沖縄青年同盟資料集刊行委員会 琉球館・5000円
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 「日本に武力併合で国を奪われ、皇民化教育と同化政策がもたらされ、戦時中は集団強制死で命を落とさなければならなかった人がいて、4人に一人が戦死した。それなのになぜ琉球人は『復帰』を選択しなければならなかったのか」

 県平和祈念資料館にグアムの先住民族チャモロの客人をお連れした際に質問された。私は一生懸命に聞きかじった米統治下の悲惨な人権状況や、戦争を放棄し平和を謳った日本国憲法への一筋の希望について説明しながらも、自分自身引っ掛かりを感じていた。県内でのフィールドワークを終えた彼女は、「グアムは米国の州でさえなく島の3割は米軍基地、チャモロは人口の3割程度。自らの島で少数者になって初めて見えることがある。沖縄の人にこの経験はしてほしくない」と言い残して帰国した。

 本書を手に取り、「復帰」前の沖縄からヤマトに就学や就職で渡った先輩方の苦悩を目の当たりにした。パスポートの取り上げや劣悪な労働環境、在日琉球人への差別。帝国主義と植民地主義が過去のものではないことを肌感覚で知った青年たち。彼らの経験と、「復帰」によって基地のない沖縄を実現させたかった故郷の同胞たちとの温度差を思った。

 まず膨大な資料を残していた方々に感謝したい。夢中になって読み進める中で、沖縄返還協定批准に向けた国会審議中に鳴り響いたヤナムンバレー(悪霊退散)の爆竹が聞こえた気がした。裁判闘争では「ウチナーヤ、ニホンヤガヤー」など琉球諸語が登場する。琉球の私たちは自らの言語を禁じられ、日本語をねじ込まれたはずだ。しかし「祖国」を名乗る権力は、琉球を「日本」と断定しながらも琉球の言葉が分からない。この滑稽さは沖縄語を使用すれば処刑された戦世(いくさゆ)から、沖縄にルーツを持つ俳優に方言禁止インタビューを行うバラエティー番組にも低通している。同化と異化を使い分けた支配は続く。「復帰」は米軍基地の固定化をもたらし、自衛隊基地の上陸を許し、シマクトゥバを消滅の危機に追いやり、豊かな自然をコンクリートで埋め尽くした。「民主主義」が統治の道具と化したこの時代に、全ての沖縄人に読んで欲しい一冊だ。

 (親川志奈子・琉球民族独立総合研究学会理事)


 沖縄青年同盟は、沖縄の日本復帰前に本土へ渡った若者による政治結社(1971年発足)。前身は沖縄青年委員会・海邦。沖縄返還協定に反対し、沖縄の自立と自己決定権を求め活動した。