県産コーヒー栽培で農業振興と地域活性化を目指そうと、コーヒー栽培のスタートアップ企業、琉球コーヒーエナジー(西原町、高木伸明社長)が、県産コーヒーの産業化に取り組んでいる。コーヒー栽培事業だけでなく、コーヒー豆の加工・販売などアグリビジネスや人材育成などを図る。
高木伸明社長(65)は元々、太陽光の差す角度にかかわらず発電できる太陽電池モジュールの開発を手掛けていた。農業用ハウスでも太陽光発電を生かせると考え、またコーヒーが好きだったこともあり今年8月、再生エネルギー事業とコーヒー栽培事業を組み合わせた企業を立ち上げた。
県農林水産部糖業農産課によると、2023年現在の県産コーヒーの作付面積は1・2ヘクタール。同社は今後、作付面積を1千ヘクタールまで拡大させ、世界3大コーヒーの米国ハワイ州コナ地区と同程度の1千トンの生産量を目指す。
沖縄は亜熱帯気候でコーヒー栽培に適した「コーヒーベルト」の北限に位置することから国内有数のコーヒー栽培に適した場所だという。だが、行政の支援がほとんど受けられず、栽培から加工まで農家が費用負担している場合が多い。また、植え付けから収穫までの期間が3年と長く、台風にも弱いことから新規参入が難しい状況にある。
同社は、台風対策としてハウス栽培を導入し、一括して豆を加工できるセンター施設を本島内に3カ所建設することで、課題解決を図る。現在、今帰仁村と琉球大学農場でコーヒーの苗木づくりや、南城市ではハウス栽培のための農地整備を進めている。
同社がコーヒー農家の増加を目指す背景には、縮小が続く沖縄の1次産業への危機感がある。年々、高齢化などで農家が減少している状況に対し「このままでは農家数はゼロに近づいていく。食べる物がなくなる」(高木氏)と懸念し、コーヒー農家を増やしつつ、栽培技術を野菜栽培などにも転用させる考え。
コーヒーにまつわる学問を体系的に学べる学校の建設も視野に入れるなど、人材育成にも注力する。高木社長は「1次産業を引き上げることが、島の人々の命を守ることになる」とした上で、「輸入文化だったコーヒーの発信地として、沖縄を世界に誇れるコーヒーアイランドにしていきたい」と話した。
(玉寄光太)