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「廃棄物=資源」排水から再生エネルギー 泡盛工場など沖縄の産業で活用 沖縄・OISTシンプソン氏


「廃棄物=資源」排水から再生エネルギー 泡盛工場など沖縄の産業で活用 沖縄・OISTシンプソン氏 Watasumiが開発した排水処理装置(同社HPより)
この記事を書いた人 Avatar photo 玉寄 光太

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の生物システムユニットの技術員、デビッド・シンプソン氏が立ち上げたスタートアップ企業「Watasumi(ワタスミ)」の排水処理装置が、県内の酒造メーカーなどで導入されている。製造現場で生じる有機排水を微生物によって浄化し、再生エネルギーであるバイオガスとして取り出すことができる。シンプソン氏は「『廃棄物』とは、廃棄されている資源だ」と述べ、製糖工場などでも導入させたい考えを示した。

デビッド・シンプソン氏
デビッド・シンプソン氏

 シンプソン氏によると、食品や飲料を1キロ製造する場合、その50倍もの排水が出る。世界の温室効果ガス排出量の5%が排水処理に使われており、同氏はこの課題を解決するため10年ほどかけて装置を開発。2021年にワタスミを設立し、22年から読谷村の比嘉酒造で試験稼働を開始した。

 同装置は、有機排水を処理装置に入れ、異なる2種類の微生物が2日間かけて排水を分解する。その際、微生物が排水から電子を発生し、もう一方の微生物が電子を受け取ることでバイオガスが発生するという。排水の持つエネルギーの約8割をバイオガスとして取り出し、有効活用することができる。処理水は有機物の99%が分解・浄化される。

 現在、同装置は製品化され、県外の酒造所でも利用されている。シンプソン氏は「今後、豆腐や泡盛、養豚だけでなく製糖業などにも活用していきたい」と話した。

 農業関連のスタートアップ企業の支援を手掛けるAgVenture Lab(あぐラボ)とJAおきなわ、OISTが9日に恩納村のOISTシーサイドキャンパスで開催したフォーラムで発表した。

 OIST技術開発イノベーションセンターのローレン・ハ准副学長は「先端技術でグローバルな課題を解決しようとするスタートアップ企業の役割は大きい」と述べた。

 (玉寄光太)