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女性の漁協役員0.5% 沖縄は1人、19都道府県ゼロ 識者「多様な担い手必要」国際女性デー2024


女性の漁協役員0.5% 沖縄は1人、19都道府県ゼロ 識者「多様な担い手必要」国際女性デー2024
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 全国の漁協役員に占める女性の割合が2021年度は約0・5%にとどまったことが2日、農林水産省の調査で分かった。19都道府県では女性役員が1人もいない。力仕事で長時間にわたる漁に出るのは圧倒的に男性が多く、女性の漁業者は少ないのが現状だが、後継者不足が深刻となる中、識者は「漁業や地域の活性化のため、若い世代や女性など多様な担い手が必要だ」と指摘する。

 調査は海沿いの39都道府県と琵琶湖がある滋賀県の計40都道府県で、知事が認可した沿海地区の漁協が対象。848漁協の21年度の業務報告書を基に集計した。それによると848漁協の役員計8346人のうち女性は21県に計41人。非常勤の監事や理事が大半で常勤理事は1人だった。

都道府県別で人数が最も多いのは広島と熊本の5人。続く福井、徳島、鹿児島が4人、岩手など3県が2人、沖縄など残る13県は1人だった。

 熊本県は県の男女共同参画計画に基づき、県内の漁協に対し女性リーダーの育成や積極的な女性登用を働きかけている。アサリを専門とする広島県廿日市市の浜毛保漁協では、役員6人のうち2人が女性だ。

 福井県の雄島漁協(坂井市)は組合員の約半数が海女で役員10人中4人が女性。全5地区のうち4地区から女性を1人ずつ選んでいるという。徳島県で女性役員がいたのは比較的小規模な漁協で、正組合員の女性の割合も2割以上だった。鹿児島県では、水産会社の女性役員が監事に就いている漁協があった。

 漁業とジェンダーに詳しい東海大の李銀姫准教授は女性の漁業者の少なさについて、重労働であることに加え「海の神様は女性で、女性が船に乗ると神様が嫉妬する」という言い伝えが各地にあるといった文化的背景を説明。船や漁協に女性用トイレがない、女性に適した漁具の開発がないなど、環境が整っていないところもあるという。

 しかし高齢化や過疎化は深刻で、李准教授は「漁村の景観や食文化などの資源も活用して新たななりわい『海業(うみぎょう)』をつくり地域を活性化させる必要がある」と指摘。そのためにも多様な視点は重要で「女性や若い人たちが入りやすくすることは漁業の持続性につながる」と話している。