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自転車 本島一周路を計画 30年度目標、沖縄県が官民協議会


自転車 本島一周路を計画 30年度目標、沖縄県が官民協議会 自転車施策を進める名護市では、路面に青い矢羽根マークを表示した車道混在の走行空間もある=2月
この記事を書いた人 Avatar photo 當山 幸都

 自転車で観光地を巡るサイクルツーリズムの推進に向け、県は2024年度にルート整備や利用拡大について議論する官民の協議会を発足させる。県自転車ネットワーク計画では、30年度までに本島一周ルートを形成する基本方針が盛り込まれた。自転車ルートを示す標識の指針や、サイクリスト受け入れ体制などについても検討を進める。

 国内でサイクルツーリズムに力を入れる先進自治体に比べ、温暖な沖縄は冬場の路面凍結がなく、観光コンテンツとして可能性を秘める。自転車普及率が低い沖縄だが、県民の利用が広がれば渋滞解消や二酸化炭素(CO2)排出量削減、健康維持の一助になることが期待されている。

 県が23年3月に策定した計画では(1)観光レジャーを目的とする本島一周ルート(2)通勤通学、買い物など日常の利用を想定した市町村間のネットワークの形成―が方針として示された。

 新たな協議会の設置は、りゅうぎん総合研究所が20年と23年にまとめたサイクルツーリズムに関する報告書がきっかけになった。サイクリストの沖縄滞在は観光の閑散期となる冬場が多く、消費額も高いことを調査で裏付けたほか、年間10万人のサイクリストが沖縄を訪れた場合の経済効果を103億円と算出した。

 提言を具現化しようと、県の担当部署のほか県内の関係団体、民間企業、県出身の元プロ選手らが集まった意見交換会が23年末から開かれていた。新年度に協議会の枠組みに移行する見通し。

 サイクルツーリズムを進める上で、安全で分かりやすい自転車道は不可欠になる。島を一周するモデルコースは、乗り手が達成感を得やすく、県によると、国内外のサイクリストから本島一周への要望がある。

 国内では、滋賀県の琵琶湖を自転車で一周する「ビワイチ」(約200キロ)や、四国一周(約千キロ)などのルートがあり、「一周」を資源にしたサイクルツーリズムに自治体が力を入れる。

 本島一周ルートは350~400キロ程度になる見通し。名護市の一部などにある、縁石で分離された自転車道を整備するには多額の予算が伴うが、国のガイドラインでは既存の道路を生かした自転車専用通行帯の整備や、車道上に青い矢羽根型のマークを表示する方法が示されている。

 県外でも採用されているこうした事例を踏まえ、意見交換会では「(一周路の整備に)巨額の資金は必要ないのではないか」との声が出た。渋滞の激しい本島中南部でのルート確保は課題となりそうで、自動車のドライバーの理解向上、安全性を最優先にした環境整備が求められる。

(當山幸都)