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【識者】円安抑制→物価高改善ならメリット 島袋伊津子氏(沖縄国際大教授)


【識者】円安抑制→物価高改善ならメリット 島袋伊津子氏(沖縄国際大教授) 島袋伊津子氏(沖縄国際大学教授)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大規模緩和開始当初からその効果を疑問視する声は多く、デフレ脱却という目的設定がそもそも合理性に欠け、振り返ってみても意義はほぼなかった。昨今の物価上昇は金融政策の効果というより戦争や新型コロナ、人手不足など金融政策以外の要因が大きく、さらにこの物価上昇は国民を豊かにしていない。大規模緩和は結局政治的なアピールに過ぎず意義はほぼなかったと評価できる。

 長年続いた政策を変更するとショックは大きい。日銀がそれを最小限にとどめるタイミングを見計らっていたとすれば、物価高や株価上昇、円安、大企業の賃上げなど、マイナス金利解除を社会が受け入れる経済的環境が整ったとして、タイミングは今だったのだと受け止められる。
 (マイナス金利解除により)金利収入の減少で悪化していた地方銀行の収益環境は改善し、預金金利も改善する。借入金利の上昇は企業や住宅ローンの借り手にとって資金調達コストが高まることになり、この点には痛みが生じるが、これまでの政策が異常な状態であり、通常の状態に適応していくべきだろう。

 また、今回の政策で円安の進行が抑制されれば、輸入物価も抑制され物価高に悩まされていた問題も多少改善される可能性がある。円安は外国人観光客の増加をもたらすが、その観光収入以上に物価高の方が多くの県民には影響が大きい。全体として、マイナス金利解除はデメリットよりもメリットの方が大きいと考える。
(金融論)