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高級魚ミーバイ 小空間で陸上養殖 「みらいおきなわ」とアーク 実用化、普及で業務提携 沖縄


高級魚ミーバイ 小空間で陸上養殖 「みらいおきなわ」とアーク 実用化、普及で業務提携 沖縄 ヤイトハタを育てる循環型陸上養殖設備(ARK提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 島袋 良太

 おきなわフィナンシャルグループ(OFG)の地域総合商社「みらいおきなわ」(那覇市、宮里尚社長)と小型陸上水産養殖設備を開発・製造するARK(アーク、東京都、竹之下航洋CEO)は29日、南方性魚介類の陸上養殖事業化に関する業務提携の基本契約を締結した。ARKは既に琉球大学と産学連携でヤイトハタの閉鎖型循環式による陸上養殖を手掛けている。県内各地に営業拠点を持つ沖縄銀行をグループに持つOFGとの連携で、県内での事業面での実用化と普及を図る。

 養殖設備はコンテナ型で、閉鎖的空間でも養殖に適する、回遊性ではない高級魚のヤイトハタ(ミーバイ)やシラヒゲウニなどの養殖を想定している。組み合わせでアーサや海ブドウなど海藻類の養殖もできるという。必要なスペースは駐車場1台分。一般的に普及する陸上養殖と違い、海沿いでなくともスペースがあれば設置できる。ホテルや飲食店などへ展開し、「活魚」としての提供などで高価格帯での販売を見据える。

みらいおきなわの宮里尚社長(左から4人目)、ARKの竹之下航洋CEO(同3人目)=29日、那覇市の沖縄銀行本店

 ARKは除菌作用が高いとされる深紫外線を当てることで水槽内部の人工海水を殺菌できる技術を採用。そのため常時排水をしなくても病気発生のリスクを低減できる。海への排水を抑え環境負荷が少ない養殖を通し、海の汚染防止や資源保護につなげるとしている。

 沖縄は陸上養殖の件数が全国の4分の1を占める普及県。ARKは全国への拡大に向けた足掛かりにしたい考え。

 設備導入費は約1千万円。太陽光発電システムを採用し、餌代を除くランニングコストは再生可能エネルギーの利用で大幅に抑える仕組みだ。スマートフォンを使った遠隔管理システムで水質や水温を管理し、ヤイトハタの場合は自然環境下よりも約1・5倍の早さで生育できるという。

 みらいおきなわは新規事業を模索する取引先企業などに導入計画の策定や資金調達の支援、生育ノウハウの提供などを担う。

 29日に記者会見したみらいおきなわの宮里社長は「台風時などの安定供給にもつながる。県内の企業や自治体に導入を図り、脱炭素社会の構築と沖縄の発展に寄与したい」と強調した。ARKの竹之下CEOは「排水がなく再生エネルギーを使うので環境負荷が少ない。みらいおきなわと販路を開拓していきたい。沖縄でモデルを発展させ、県外に発信していきたい」と意気込んだ。 

(島袋良太)