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共生社会の実現へ 新里えり子(農業者・農福連携技術支援者) <仕事の余白>


共生社会の実現へ 新里えり子(農業者・農福連携技術支援者) <仕事の余白>  新里えり子
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 「合理的配慮」という言葉に、一瞬夫婦間の忖度(そんたく)の話かと思ったのは恐らく私だけのようだ。

 合理的配慮とは、障がいのある方が障がいを持たない人と同じことができるように、事業者は「負担が重すぎない範囲」で対応することである。「障害者差別解消法」の改正で合理的配慮が4月から企業など民間事業者に義務化された。

 互いに話し合い、共に解決策を検討する。障がいのある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら共に生きる社会(共生社会)を実現することを目指す。

 先日、沖縄県の6次産業化の事業説明会へ弊社の聴覚障がい者の方と一緒に参加した。ただ、手話ができないため、参加申し込みの際、別の手段で何かしらの対応をお願いできないかとダメもとで相談をしてみた。

 当日は音声文字化のアプリで対応いただき、音声を拾うためのマイクの配置が工夫されていた。講師の方にも事前に伝えられていた。アプリによる文字化は専門的な用語の時、まれにご愛嬌(あいきょう)程度の漢字の誤変換があるものの間違いなく私より処理能力は高い。念のためにと待機させていた筆談セットはかばんの中で日の目を見ずに終わった。

 一緒に参加した方に感想を聞いたところ、「説明はしっかり理解でき、おかげで商品開発への希望が膨らみワクワクした」と満面の笑みだった。きっとそれが当たり前のことなのだが、私もうれしく幸せな良い1日だった。ご対応いただいた事務局の方々に心から感謝したい。

新里 えり子 しんざと・えりこ

 農業者。うるま市在住。石垣市出身。大学卒業後、IT系会社を経て、就農を目指し県立農業大学校で学ぶ。卒業と同時に新規就農。沖縄在来種山葡萄のワイン「涙(なだ)」の原料やその他果樹を栽培。障がい者の就労・雇用の機会を支援する農福連携技術支援者としても活動中。