ここ10年で沖縄に根付いた「千円ステーキ」の文化が終焉(しゅうえん)を迎えつつある。主に輸入の赤身肉を扱ってきた沖縄のステーキ業界だが、円安と物価高のダブルパンチによる仕入れ値の高騰を受け、「脱千円」の動きが鮮明となっている。いずれ専門店のメニューから消えてしまうことになりそうだ。
総務省統計局の消費者物価指数によると、2020年の価格水準を100とした場合、24年5月の輸入牛肉価格は131・7まで上昇した。国産牛肉、鶏肉、輸入豚肉、国産豚肉は107・2~115・9で、輸入牛肉の値上がり幅は特に大きい。
「千円ステーキ」の火付け役でもある「やっぱりステーキ」を経営するディーズプランニング(那覇市、義元大蔵社長)は「安くておいしい」をテーマにした店舗を今後も主軸とする一方、6月には消費単価が高いインバウンド(訪日客)を主な客層とした新たな業態「やっぱりステーキプレミアム」を那覇市の国際通りにプレオープンした。厚切りのUSプライム牛や和牛を扱い、客単価は1万5千円を想定している。
同社は円安への対応で海外展開も加速する。年内にはオーストラリアやシンガポール、フィリピンセブ島など4カ国で11店舗を開業予定。5年後には海外店舗数を3桁まで増やす計画だ。
大手ステーキ店の経営者らが今年5月、業界発展を目的に沖縄ステーキ協会を立ち上げた。事務局を務める経営コンサルタント会社・ブルームーンパートナーズの伊波貢代表は「以前は200グラムだった『千円ステーキ』が価格高騰で150グラム、100グラムとせざるを得なくなっている」と指摘し、「これ以上、千円の価格を維持するのは当然無理で、業界では千円ステーキからの脱却が議論されている」と説明する。
その上で「赤身肉を食べるのは沖縄の文化とも言える。県民が気軽に食べられる価格から高価格帯まで、客層に応じた『縦の展開』が求められる」と強調した。
(島袋良太)