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障がい者のキャリア形成へ 新里えり子(農業者・農福連携技術支援者)<仕事の余白>


障がい者のキャリア形成へ 新里えり子(農業者・農福連携技術支援者)<仕事の余白>  新里えり子
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 「5年働くと正社員になるのですか?」と、1人の若い青年から質問を受けた。弊社では障がい者も含め全員に1on1(ワンオンワン)と呼ばれる個人面談を定期的に行い、アイディアの吸い上げや、キャリア形成の悩みなどを聞いている。その面談の際、彼が心配そうな顔をして尋ねてきた。

 5年勤続の有期雇用の従業員から申し出があれば、無期雇用にしないといけないという制度があることを説明し、「5年もかけずにもっと早くそうできるように、私も頑張るつもりだ」と彼に伝えた。

 彼は心配そうな顔で「そうなるとパソコンを使ったり、いろいろ読んだり、書いたりしないといけないってことですよね。たぶん、僕には難しいです」と返された。いつも楽しそうに仕事をし、仕事の飲み込みが早く、観察力に長け、その上、農業機械も器用に使いこなす。大戦力となって仕事ができる彼がそんなことを言うのだ。

 読み書きができないからといって、人生プランやキャリア形成を閉ざしてしまうしかないのだろうか。そうであってはいけない。そういう彼の夢は「いつか旅行に行きたい」「家庭をもつ」なのだ。弊社には他にも18人の障がいを抱える方を直接雇用している。特性はそれぞれで、その一方で別の才能に長けていることも確かだ。

 障がいが彼ら彼女らのキャリア形成や人生プランを阻害してはいけない。障がいが夢や学びの機会を奪ってもいけないとも考える。私も私にできることをひとつずつ解決していきたい。

新里 えり子 しんざと・えりこ

 農業者。うるま市在住。石垣市出身。大学卒業後、IT系会社を経て、就農を目指し県立農業大学校で学ぶ。卒業と同時に新規就農。沖縄在来種山葡萄のワイン「涙(なだ)」の原料やその他果樹を栽培。障がい者の就労・雇用の機会を支援する農福連携技術支援者としても活動中。