金秀アルミ工業副会長や金秀商事社長などを歴任し、2015~19年まで県工業連合会会長を務めた呉屋守章氏(74)が、金属に力を加えて加工する「塑性(そせい)加工」を行う際の作業手続きを大きく簡略化できる計算式を確立し、特許を取得した。計算式を活用することで自動車や電気設備などを製造する際の金属加工の変形に関する実験を短縮することができ、工程の効率化が期待できる。
特許は「材料特性パラメータの算定方法」の名称で出願し、5月20日付で登録された。
呉屋氏は那覇高を卒業後、山形大工学部や東北大大学院で工学を修め、博士号を取得。琉球大工学部で助教授をしていた。金秀グループ創業者の故・呉屋秀信氏の次男で、00年に金秀グループの経営に参画し、グループ企業の役員や工連会長を務めた。リタイア後の21年ごろから再び研究への情熱をたぎらせ、約3年をかけて今回の計算式を確立したという。
基になったのは自身が研究者時代の1990年に、東北大の伊藤耿一名誉教授と確立した「呉屋・伊藤の構成式(応力増分方向依存塑性構成式)」。これは金属を塑性加工する際に発生する「割れ」や「しわ」がどう起きうるかを事前に予測するもの。
この計算式は加工の現場の金属成形シミュレーションで用いられ、工程の簡素化に貢献しているが、それでも金属の変形試験を何百回も繰り返す必要があった。今回見いだした変数を計算式に反映させると、試験を10回程度にまで減らすことができ、時間や費用を大幅に削減できるという。金属板にどの程度の力を加えれば割れが発生するかを調べる「FLD試験」のデータを応用した。
呉屋氏は「研究職を離れて20年以上手つかずの状態で置いていたが、無事完了して良かった。いろいろな場面で使ってもらうことで、工業の発展につながればうれしい」と話した。
(島袋良太)