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【インタビュー】沖縄の最低賃金952円 期待や課題は 県内労使トップに聞く


【インタビュー】沖縄の最低賃金952円 期待や課題は 県内労使トップに聞く 那覇市街地(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 若菜

 沖縄地方最低賃金審議会は13日に県内の最低賃金を現行の時給896円から56円引き上げて952円とするよう沖縄労働局へ答申した。昨年の43円増を上回る過去最大の引き上げ幅。今回の議論や改定案について、経営側、労働側はどう受け止めているのか。県経営者協会の宮城茂会長と、連合沖縄の仲宗根哲会長に話を聞いた。 (聞き手・新垣若菜)

準備期間の議論必要 宮城茂氏(県経営者協会会長)

石垣茂氏

 ―最低賃金952円(引き上げ幅56円)について。

 「賃金引き上げの必要性は当然だが、引き上げ幅は想定を超えていた。経営に与える影響を危惧している。資材高騰による価格転嫁が遅れている業種もある。そのことを踏まえると、賃金引き上げのための準備期間が必要となる。今回はそれに対する配慮がなく残念に思っている。国や県は業務改善助成金などの活用、あるいは引き上げに伴う公契約の改定など、引き上げが可能となる環境づくりに最大限取り組んでもらいたい」

 ―全国との賃金格差についてどう考えるか。

 「経済規模が大きい都市部と比べると格差は否めない。是正するためには前提として県経済を強くすること以外にない。再生強化を図りつつ、各企業が付加価値を高め、生産性を向上させる。そして賃上げの原資を確保し、その中で収益拡大にも取り組む。その取り組みを労使一体となって行うことで経済の好循環を生むという仕組み作りが求められている。ただ経済を強くするには時間も必要となる」

 ―県経済への影響は。

 「政府は2030年半ばまでに1500円の賃上げを掲げている。ただ、競争や取引もあり、価格転嫁が進まない中で、今回同様の引き上げ幅が続くと、大きな負担となり企業の体力もなくなる。経営者側も合理化、DX化を進める企業努力はもちろんだが、そこに取り組む上でも、賃上げに対する準備期間を事業年度まで保留するなど抜本的な議論が必要だ」

国や県が企業支援を 仲宗根哲氏(連合沖縄会長)

仲宗根哲氏

 ―最低賃金952円(引き上げ幅56円)について。

 「過去最大の引き上げ幅となった。一定の評価はしつつも、現状の物価高には追いついておらず生活改善にはまだつながっていない。連合沖縄が掲げる25年度までには千円以上で、なおかつ継続的な引き上げが必要ということは公益側も理解しているだろう。企業は価格転嫁の面などで、消費者側は消費行動、国や県は企業支援など全体での努力があってこそ経済の好転につなげることができる」

 ―全国との賃金格差について。

 「沖縄は東京などの都市部と比べても生活コストが安価ということは決してない。物価高という状況は変わらないのに、賃金の格差があるのは是正しなければいけない」

 「労働力の流出の問題もある。過去最高の引き上げ幅と言えど、依然として全国最低水準であることに変わりはない。労働者が賃金が高い方に動くのは当然だ。どの企業も人手不足が深刻な中で、流出を食い止めるためには賃金の底上げが重要となってくる」

 ―県経済への影響は。

 「県経済が好転するのはまだ時間がかかるだろう。消費者もいまだ積極的な消費行動につなげられる状況ではない。中小・零細企業が多い沖縄で今回と同水準の引き上げ継続は、体力的にも厳しいことは理解している。ただ、このままではいけないというのは共通認識でもあるだろう。そのためにも企業支援や国民が暮らしやすい環境づくりへ、国や行政の積極的な取り組みが不可欠だ」