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【深掘り】那覇空港の拡張調査、期待と不安 「特定利用」の防衛・軍事利用へ懸念の声も 沖縄


【深掘り】那覇空港の拡張調査、期待と不安 「特定利用」の防衛・軍事利用へ懸念の声も 沖縄 機能強化に向けて、拡張を検討する調査が始まる那覇空港=2020年3月15日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 機能強化に向けた調査が実施されることが分かった沖縄の空の玄関口の那覇空港。コロナ禍が落ち着いたことで今後の利用増加が見込まれ、調査は利用急増に備える意図がある。一方で調査を行う沖縄総合事務局は、航空会社のほか自衛隊と海上保安庁からも意見を聴取する方針だ。那覇空港は今年4月に、政府が安全保障上必要性の高い空港などを自衛隊などのニーズに基づいて整備する「特定利用空港・港湾」に指定された。今回の調査がこの制度に基づく整備につながることはないのかと懸念する声もある。

 2020年に第2滑走路増設が実現し、発着の混雑は緩和したが、施設全体としては依然として狭隘(きょうあい)だ。滑走路が2本あり、年間の旅客数が近い空港と敷地面積を単純に比較すると、関西空港(大阪府)は二つの人工島の合計が1055ヘクタール、新千歳空港(北海道)の728ヘクタールに対し、那覇空港は494ヘクタール。周囲を海と自衛隊施設に囲まれた那覇空港は、今後需要が増えた場合の対応には限界がある。

 最近では県内経済団体が中心となった「GW(ゲートウェイ) 2050」推進協議会が、空港の機能強化と基地返還跡地との一体開発構想を提言するなど、空港機能の強化に向けた動きが活発化し、拡張への期待は高まっている。

 国管理の同空港は今年4月、石垣市管理の石垣港などとともに「特定利用空港・港湾」に指定された。同制度を巡っては、ハード整備に地元の期待があるが、米軍を含む軍事利用の拡大につながる恐れも指摘される。

 国土交通省は特定利用空港に指定された那覇を含む全国5空港の整備に向けて、4月以降順次、自衛隊と海上保安庁の3者で意見交換を行っているという。

 総合事務局の担当者は今回の調査について「特定利用空港のための調査、というものではない」とし「特定利用空港の話がなくとも実施する業務。需要が増加した際にどういった選択肢があるのか、ニュートラルに検討する」と意義を説明。自衛隊などからの聴取については「(那覇空港が)特定利用空港の枠組みに入ったということもあり、意見を聞く程度だ」と話した。総合事務局から調査の説明を受けた県には、自衛隊と海上保安庁から意見聴取することは伝えられていなかったという。県幹部は「(特定利用と)関係ないとは言っても、タイミングから見て実際どうなのか分からない」と警戒した。

(石井恵理菜、與那原采恵、知念征尚)