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沖縄の最低賃金、952円で発効 中小零細企業にのしかかる負担 政府目標「1500円」に警戒感も


沖縄の最低賃金、952円で発効 中小零細企業にのしかかる負担 政府目標「1500円」に警戒感も 給与明細(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 若菜

 2024年度の県内最低賃金が9日発効し、これまでの時給896円から過去最高の56円引き上げ952円となった。生活水準の維持、向上のため、労働者も経営側も賃上げの必要性を挙げる一方で、県内で多くを占める中小零細企業に人件費の負担が重くのし掛かる。そんな中、30年半ばまでに全国平均1500円という政府の賃上げ目標で、石破茂首相が20年代での引き上げを宣言。経営者からは「とても実現できるものではない」との声が漏れる。

 改定額の全国加重平均額は1055円。沖縄は国の中央最低賃金審議会が示した引き上げ目安の50円に比べ6円高い引き上げとなったが、全国では依然として低い水準だ。

 「物価高の中で賃上げはもちろんだが、ただ、それに伴い賃金体系も大きく動くので企業側としては準備期間がほしい」と語るのは県ビルメンテナンス協会の大嶺健太郎会長。「今回も苦しかったが、石破首相の目標で考えると、1年で110円の増額になる。持たない企業が出てくる。そうすれば働く場所が減り、悪循環だ。現実的にどうすれば国民の負担が減るのかを真剣に考えてほしい」とため息をついた。

 賃上げに伴い、経営側にはある懸念も。年収106万円を超えると扶養から外れて社会保険料を新たに支払う必要が生じる「106万円の壁」と呼ばれる問題だ。それを回避するために労働時間を調整することで、企業の労働力不足が深刻化している面もある。沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は「雇用される側が安心して働ける環境づくりが大切だ。政府はまずそういう矛盾を解決する政策を」と求めた。

 賃上げの負担感が増す中で、沖縄労働局の柴田栄二郎局長は「価格転嫁や生産性向上を支援し、中小企業等が賃上げできる環境整備に取り組みたい」と強調。県中小企業家同友会の座間味亮代表理事は「物価高なので所得を上げていかねばならない。それならば企業は会社が存続できる事業計画を立て、企業の付加価値を高め、そして地域から人材流出をさせないといった努力が求められる」と話した。避けられない経営課題に県内企業は踏ん張りどころとなっている。 

(新垣若菜)