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ICT活用でトマト周年栽培 自動で気温、給水管理 トマタツファーム 沖縄・うるま


ICT活用でトマト周年栽培 自動で気温、給水管理 トマタツファーム 沖縄・うるま ICT農業の実践でトマトの周年栽培を実現したトマタツファームの新里龍武社長=10月30日、うるま市勝連南風原
この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 うるま市勝連の農業法人、トマタツファーム(新里龍武社長)は情報通信技術(ICT)を活用した先進技術を取り入れ、気温の高い沖縄では難しかったトマトの周年栽培を実現している。土を使わない養液栽培によって管理を容易にした上で、ハウスに設置したセンサーで気温や日射量、雨量などを感知して窓の開閉、給水量などを自動化する。

 トマトの栽培に適した気温は昼間は25~30度、夜は10~15度とされる。気温の高い沖縄では6~10月にかけて栽培が難しく、県産に比べて割高な県外産トマトが流通している。同社は周年栽培を実現することで、うるま市のファーマーズマーケット「うるマルシェ」で大玉トマトを500グラム330円(税込み)で販売し、好評を博している。また、ICT導入で生産性が向上したことで、週休2日制も実現した。

 今期の10アール当たり収量(反収)はミニトマト約17トン、大玉トマト約30トンを見通す。県内トマト農家の平均反収に比べ2倍以上という。気象条件や肥料に対する茎の太さなどのデータが蓄積されることで栽培方法が改善され、収量は年を追うごとに増えている。2021年に設立され、三作目の本年度の収支は赤字見通しだが、来期には初の黒字化を目指す。

 石垣市出身で、実家も野菜農家を営む新里社長は関西で会社員をしていたころに農業での独立を考え、養液栽培とICTを活用し先進的な農業を実践していた兵庫県の東馬場農園で研修した。

 だが、いざ県内でICT農業を始めようと金融機関へ相談に赴くも、前例がないため融資を渋られた。そこでクラウドファンディング(CF)で500万円を募り初期投資に充てるなど、資金調達を工夫した。

 新里社長は「経験や勘よりもデータを基にする方が適切に管理できる。農業は初期投資や農地の確保などで参入障壁が高いが、新たな技術を導入することで安定した収量を維持し、黒字化できることを見せたい」と話した。

 (梅田正覚)