国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、泡盛や日本酒、本格焼酎などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。文化庁が5日、発表した。12月2~7日にパラグアイ・アスンシオンで開かれるユネスコ政府間委員会で正式決定される見通し。登録されれば国内23件目となる。伝統的な酒造りは国内各地に広がっており、輸出拡大や地域活性化への期待が高まりそうだ。
伝統的酒造りは、カビの一種であるこうじ菌を使い、コメなどの原料を発酵させる日本古来の技術。複数の発酵を同じ容器の中で同時に進める世界でも珍しい製法で、各地の風土や気候の知識などとも結びつけながら、杜氏(とうじ)や蔵人らが手作業によって築き上げてきた。
泡盛造りは「黒こうじ」を使うのが特徴で、仕込みの工程などを含め、主に白こうじや黄こうじが使われる焼酎、日本酒とは違う固有の酒造文化を築いてきた。甕(かめ)などで熟成させる「古酒」も魅力の一つだ。県酒造組合の佐久本学会長は「認定されれば発信力の強化につながる」と歓迎し「泡盛文化を次世代に広げるきっかけにしたい」と話した。
代々受け継がれた技術で造られる酒には、日本酒や本格焼酎、泡盛のほか、もち米と焼酎を使って甘みを引き出す本みりん、もろみに木灰を加えて保存性を高めた灰持酒(あくもちざけ)などがある。
政府は2021年、伝統的酒造りを国内の登録無形文化財に選定。文化審議会の答申を経て22年にユネスコに申請した。
県内の無形文化遺産は2010年登録の「組踊」と、18年登録の「来訪神」に8県の伝統行事の一つとして含まれた「宮古島のパーントゥ」がある。
国内の無形文化遺産は「和食」や、22年に登録された豊作祈願や厄払いの踊り「風流踊(ふりゅうおどり)」など22件ある。政府が伝統的酒造りに次いで登録を目指す「書道」は、26年秋ごろ審査される見通し。