ピリッとした味が好き?
知っているようでよく知らない、不思議できれいな海の生き物、ウミウシ。貝殻を持たない生き方に進化した、巻貝の仲間です。彼らは、殻の代わりに毒を持つ、という方法で身を守るようになりました。小さくてやわらかい体なのに、とても目立つ色をしていることが多いのは、「私を食べるとキケン!」という自己主張なのでしょう。
ウミウシの毒は、食べ物から得ることが多いようです。ウミウシの食べ物は、主にカイメンやホヤなど、海底にくっついて暮らす生き物。それらが持つ毒を、体にためて利用するんです。自分は毒に当たらずに、ためて自分の武器にできるって、すごいですね。
そして、そのさらなる進化系が、このミノウミウシの仲間。食べるのは、毒針を発射する「刺胞細胞」を持つヒドラの仲間。そして、なんとミノウミウシは、この刺胞細胞を消化せずに、自分の体のふさふさの先端に運んで、自分の武器として利用する!
ヒドラを食べても刺されないし、胃袋の役目をする消化腺は枝分かれしてふさふさの先まで伸びていて、自分と全く違う種類の生き物の細胞を、そのまま自分の体にセットしてしまう…。何ともすごい仕組みを、ミノウミウシはこの小さな体に秘めているのです。すごいぞウミウシ。
Vol. 21 ムカデミノウミウシ
Pteraeolidia semperi
● 目:裸鰓目 Nudibranchia
● 科:ヨツスジミノウミウシ科 Facelinidae
● 属:ムカデミノウミウシ属 Pteraeolidia
動画撮影:
ムカデミノウミウシとミナミエダウミヒドラ 2019年11月12日(浦添市・カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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