素早い後ずさりで砂の中へ
砂浜の波打ち際には、沖縄でカーミーグヮー(小さなカメ)と呼ばれる生き物がいます。どんな生きもの?と思いませんか。英語では mole crab、モグラのカニ。ますます意味が分からない!これは、スナホリガニという2cmくらいの生き物で、名前にカニとつきますがハサミはありません。楕円(だえん)形の甲羅がつるんと丸く、ウチナーンチュはカメっぽいと思ったのでしょう。そして、スナホリという名前の通り、いつも砂に潜っています。だから英語名はモグラ!実はこれ、ヤドカリに近い生き物なんです。
沖縄には2種類いて、前に伸ばした腕が細い円柱形のようだとスナホリガニ、少し平べったい感じだとミナミスナホリガニ。この腕で、波に舞い上がる小さな餌を集めて食べるんです。波打ち際の砂を、ごそごそ探ってみてください。チョロっと動くスナホリガニがきっと見つかります。でも、本当に動きが素早くて、あっという間に砂に潜ってしまう。しかも体の色は砂とそっくり。一瞬目を離すと、もうどこにいるのか分からない!
カメもモグラも前に進みますが、スナホリガニは常に後ずさり。体の下にある平べったい足で砂を掘って、後ろ向きに潜ります。泳ぐ時も、一番後ろの足をパタパタさせて後ろ向きに進む。でも、よく考えたら、敵を見ながら後ろに進んだ方が、うまく逃げられるのかもしれませんね。そうして、気持ちだけはきっと前向きに生きているんじゃないかな。
Vol. 26 スナホリガニ
Hippa pacifica
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:スナホリガニ科 Hippidae
● 属:スナホリガニ属 Hippa
動画撮影:
スナホリガニ 2020年4月8日(浦添市カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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