【動画】月の満ち欠けが分かっちゃうのが不思議!~オカヤドカリの放幼生~<沖縄・海の生き物たちVol.29>


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新月の夕方、オカヤドカリの赤ちゃんは大海原へ

初夏から夏の終わり頃、沖縄の海の生き物たちは、多くが繁殖期を迎えます。砂浜のオカヤドカリたちも、そのひとつ。しかも、新月や満月という月のリズムを分かっているのが、不思議なところです。新月や満月は大潮で、夕暮れ時が満潮の時。陸から波打ち際に降りて、子どもを海に放つ彼らには、このタイミングがちょうど良いんです。

6月、新月近くの大潮の夕方、海岸にたくさんのナキオカヤドカリが集まりました。見た目ではオスとメスの区別がつかないけれど、波打ち際へと急ぐのはたいていメス。貝殻に隠れたおなかに、熟した卵を抱えています。そこへオスが抱きついてきました。メスは、嫌がってオスを振り切ることもあるけれど、受け入れて交接することもあります。この時、オスから渡された精子のかたまりは、ネバネバとおなかにくっついて、多少のことでは剥がれません。次の産卵の時の受精に使われるんです。

さて、オスから解放されたメスは、今抱えている熟した卵を海で孵化(ふか)させるために、波打ち際へと入っていきます。そして、体を貝殻から出し入れするような動きを何度か繰り返して、貝殻の中に海水を入れます。その瞬間、熟した卵が割れて、孵化した赤ちゃんが一斉に海に放たれます。小さなエビのような赤ちゃんは、大海原で1カ月ほど暮らし、やがて体の形をヤドカリに変え、小さな貝殻を見つけて、どこかの砂浜へと上陸します。

夏の終わりから秋の初め頃、砂浜では5ミリにも満たないようなオカヤドカリの子どもを見ることができるでしょう。でも、陸での暮らしも楽ではありません。自然の岩はでこぼこがあって登りやすいけれど、コンクリートの護岸はつるつる、日陰もなくて暑いはず。小さな生き物の視点になって、海辺の環境を見直してほしいな、という彼らの声が聞こえてくるような気がします。

Vol. 29 ナキオカヤドカリ

Coenobita rugosus

● 目:十脚目 Decapoda

● 科:オカヤドカリ科 Coenobitidae

● 属:オカヤドカリ属 Coenobita

 

動画撮影:
ナキオカヤドカリ  2020年6月20日(うるま市 宮城島)
稚ヤドカリ  2019年9月2日(南城市 玉城海岸)

動画撮影・編集&執筆

鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)

琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。

鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)

東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。

 

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