ただいまー　山城勝秀、山城塾（無料塾）代表＜未来へいっぽにほ＞

　数年前、私の携帯に1通のメールが届いた。「ただいまー」。送り主は、中学1年から2年生にかけて時々塾に通っていた女の子である。私が声をかけても「黙れ！」「うるさい」「ハゲ」くらいしか言わない子であったが、なぜかこの塾で勉強をしたいと、中学卒業後、半年も経（た）ってから連絡をしてきたのである。中学3年の時は、全く学校に行かず塾にも顔を出すことがなかった。卒業してから通信制高校に通い、1人で勉強していたので現役の中学生のいる塾で学び直しをしたかったのだろう。

　塾に来た時は小学生に勉強を教え、一緒に遊んでいた。居心地がいいのか楽しそうである。アルバイトも多い時は3カ所掛け持ちをして、給料が入ると「先生～。何かお菓子でも差し入れしようか？　何がいい？」と以前とは変わって優しい電話がかかってくる。最近、飲み物をたくさん持って塾に来た。冷蔵庫を開けて「先生、賞味期限が過ぎているものは処分しなきゃダメだよ」と言って、片付けてくれるのである。

　塾には卒業しても遊びに来て近況報告をする子も多い。先日も高校生になった4人組から「今から、塾に来てもいいですか」と電話があり、電話が切れるや否や塾に4人が現れた。仲間の1人が元気がないので、気遣って「みんなで塾に行こうぜ」となったらしい。仲間を思う優しい子に成長してうれしい限りである。

　私の塾は勉強も教えるが、生徒たちには人としても優しく、周りに気遣いができるようになってもらいたい。そして私は、「ただいまー」と生徒が来たら、「お帰り」と迎えられる居場所を作りたいと思う。