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自治体独自の奨学金 久米忠史(奨学金アドバイザー、まなびシード代表取締役) <仕事の余白>


自治体独自の奨学金 久米忠史(奨学金アドバイザー、まなびシード代表取締役) <仕事の余白> 久米忠史
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 県内高校では日本学生支援機構(JASSO)奨学金の募集業務がピークを迎えている頃だろう。国の奨学金事業は、20年度に開始した「高等教育の修学支援新制度」で大きく前進した。給付型奨学金に加え、入学金と授業料が減免される。世帯年収に応じて住民税非課税の第1区分は満額支援、第2区分(3分の2支援)、第3区分(3分の1支援)と3段階の支援割合が取られ、本年度からは第4区分が新設された。

 国の動きを受け、全国の自治体でも少しずつ変化が見られる。中でも「那覇市給付型奨学金」は特筆すべき自治体独自の奨学金だ。

 修学支援新制度の学費減免では、第2、第3区分採用者はそれぞれ3分の1、3分の2の本人負担分が発生する。那覇市給付型奨学金は、修学支援新制度の本人負担分を補填(ほてん)する。つまり、採用者全員が第1区分と同額の支援が受けられる。第4区分でも同様の対応だ。しかも、修学支援新制度では減免対象外の「施設費」も上限20万円給付されるほか、入学金など合格発表後に必要な入学前納付金にも給付対応している。

 JASSO奨学金は貸与型・給付型ともに支給されるのは入学後だ。修学支援新制度の採用者にとって数十万円もの入学前納付金を準備するのは容易ではない。文科省は、各大学等に納付金の徴収猶予など柔軟な対応を求めているが、強制力はない。国の支援制度の課題点をクリアしたのが那覇市給付型奨学金の最大の特長だ。

 全国的にも那覇市の取り組みは先進的だが、県内他市町村でも給付型奨学金を新設する動きが広がっている。お住まいの自治体の奨学金情報を、ぜひチェックしてほしい。

久米忠史 くめ・ただし

 奨学金アドバイザー。まなびシード代表取締役。2004年から沖縄の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが好評で、現在は全国各地で講演を行う。1968年生まれ、和歌山県出身。