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スクリーンタイム スプリー・ティトゥス(琉球大学教育学部准教授) <未来へいっぽにほ>


スクリーンタイム スプリー・ティトゥス(琉球大学教育学部准教授) <未来へいっぽにほ> スプリー・ティトゥス
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 数年前から学校では「GIGAスクール」や「情報通信技術(ICT)」という用語をよく耳にする。簡単に言うと中央の偉い人たちが考えた学校のデジタル化だ。学校でiPad(アイパッド)のようなデバイスを使う時間が急激に増えているが、その妥当性についての議論はほとんどない。

 新しい技術による日常の変化は以前からあったが、海外の研究で2012年ごろから中高生のメンタルヘルスが急激に崩れていることが分かった。そのころからインスタグラムやTikTok(ティックトック)などのSNSアプリが広まり、中高生の日常が国際的大企業に搾取されている。パソコンやゲームの時代から男子の活気が失われてきているが、SNSの広がりで特に女子のメンタルヘルスが悪化しているという。

 国による多少の差はあるが、今の中高生がスマートフォンなどを見る「スクリーンタイム」は1日6~7時間に上る。その上に学校でデジタルデバイスを使う時間も加わる。

 少し前の子どもたちは1日何時間でも外で遊び、体をたっぷり使って、相手と向き合ってコミュニケーションして大人になってきた。今の子どもを見ると自分の体がデバイスの延長になるほど身体的体験が少なくなっている。人類の歴史でかつてない子どもたちの日常の変容に、学校教育はどう向き合えばいいのか。もう少し根本的に考えた方がいい。

 スマホを使いすぎる中高生に悩む親は少なくないと思うが、できるだけその悩みを地域や学校で共有し、一緒に考えることは意義がある。子どもは育つ環境を選べないので、そこに社会や地域の皆さんの力と責任が重要になる。

スプリー・ティトゥス

 琉球大学教育学部准教授。ベルリン芸術大で建築の修士課程を修了した。沖縄を拠点にアート・まちづくり・教育を横断的に結びつける国際的な活動を展開している。1966年生まれ、ドイツ出身。