『リメンバリング オキナワ 沖縄島定点探訪』(岡本尚文編著/トゥーヴァージンズ刊)が全国発売された。これは、主に復帰前の沖縄を訪れたアメリカ人が撮影した風景写真と、現在の同位置・構図で撮影した写真を比較して、沖縄の暮らしや文化、環境の移り変わりをたどるという興味深い本である。現在の見慣れた町並みや風景が、かつては英字看板が林立し、派手なアメリカ車が行き交うエキゾチックな光景であったことを、このようなビジュアルで見せられると、その変貌に改めて驚いてしまう。他にもシンプルかつ効果的な仕掛けが随所に施されているのも見どころだ。
編集と現在パートの撮影を行ったのは東京在住の写真家・岡本尚文。1979年の初来沖以降、現在に至るまで幾度となく沖縄を訪れては写真を撮り続けることで、沖縄という特異な歴史を歩んだ地域と日本本土、ひいては自分との関係を模索してきた。そのまなざしは真摯(しんし)で、しかも温かみがある。
また本著は、拙稿の監修を担当している當間早志が深く関わっている。長年の映画館調査で培われたリサーチ能力を発揮して、復帰前に撮影された写真の年代と場所を次々と特定したそうだ。
當間が監修したということもあってか、映画館も多く登場する。国際通りの発端となった「アーニーパイル国際劇場」をはじめ、暗渠(あんきょ)化前のガーブ川のほとりに建つ「沖映本館」、現在の「国際通りのれん街」敷地にあった「大宝館」、安里三差路の「琉映本館」、糸満ロータリーそばの「新世界館」など、どれも今では“まぼろし”となった劇場である。一方で、現在も建物が残る「首里劇場」と「普天間琉映館」も掲載されており、その貴重さに気付かされる。また、映画館が登場しない写真にも上映予定作品を告げる看板や横断幕がさまざまな場所に写り込んでおり、かつて映画は娯楽の王様だったことが見て取れるのが面白い。
なお、戦後沖縄の復興に映画館が深く関わっていたことについては、當間自身が本著にコラムを寄せているので一読いただきたい。他にも、前述の岡本をはじめ、歴史家ラブ・オーシュリーに建築士の普久原朝充、そしてアメリカ世の貴重な証言者である川平朝清のコラムも掲載されており、目をみはる充実ぶりとなっている。
激動の沖縄戦後史に思いを馳(は)せつつ、何度も読み返したい名著である。
(平良竜次、シネマラボ突貫小僧・代表)
(當間早志監修)
(第2金曜日掲載)