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バーチャル首里劇場と新世界館 メタバースに劇場再現 <沖縄まぼろし映画館>166


バーチャル首里劇場と新世界館 メタバースに劇場再現 <沖縄まぼろし映画館>166 上から『首里劇場』と『新世界館』。QRコードでスマホから参加できる
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 デザイナーの平井晋(すすむ)さん(糸満市在住)が面白い試みを行っている。沖縄に現存する最古の映画館『首里劇場』(1950年開館)を3Dソフトで再現、メタバース(仮想空間)に設置したのだ。

 本人は「ただの趣味」と謙遜するが、これがなかなか面白い。

 PCやスマホから訪問が可能で、館内各所を歩き回れる。上映もできて、映写室のボタンを押すと故・金城政則館長の肉声が流れたり、1時間ごとに外観が開館当時、60年代、80年代、現在へと変わる仕掛けがあったりと飽きることがない。バーチャル『首里劇場』を作るきっかけを聞いた。

 「ハコ(劇場)がすてきだから。故郷に『八千代座』(熊本県山鹿市)って明治時代の芝居小屋があるのだけど、沖縄にも同じような劇場があるんだ、コレはすごいなって。たくさんの人に知ってほしくて」

 だが本物の『首里劇場』は安全面から入れない場所も多くある。そこで「3Dでどこでも見られるようにしよう」と思い立った。

 本物と寸分変わらぬ正確なものを作ることもできるのだが、データが重くなりすぎると動きが鈍くなってしまう。気軽に遊べるようにするためには「力の抜きどころ」が重要だそうだ。

 「3Dの良さは公開後も直せること。まずは公開して、そのつど修正していけばいい」

 昨年、館長が死去したことで劇場は休館となり、簡単に立ち入れない。バーチャル『首里劇場』の価値はますます高まっている。

 現在は糸満ロータリーのそばにあった映画館『新世界館』(51年開館、後の糸満国映館)を作成中だ。

 「これを作るようになって糸満の先輩方との交流が増えた。特に86歳になる女性は旦那が映写技師だったということで、当時の『新世界館』について細かく教えてもらっている。それを3Dに反映させてOKを頂いたりしている」

 周辺の町並みも再現、通りを行き交う荷馬車や米軍ジープも作った。

 「いつも散歩している近所だけど、昔の様子を聞き込みするようになって以来、見える景色が一変した。ここまで海で、この辺に市場があって栄えていたのか…とか。町を深く楽しめるようになった」

 これらの劇場は「クラスター」(https://cluster.mu)で体験できる。もちろん無料だ。

 (平良竜次、シネマラボ突貫小僧・代表)
 (當間早志監修)
 (第2金曜日掲載)