海に焦点を当て文化交流
今年、環太平洋地区にフォーカスした沖縄発の映画祭「Cinema at Sea – 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」が誕生。先月終えたばかりの第1回は、7日間の期間中映画37本を上映しさまざまなイベントを行うなど、にぎやかに開催された。今後も毎年秋の開催を目指しているという。運営に携わる2人のウチナーンチュ、アンバサダーの尚玄さんと理事の東盛あいかさんに語ってもらった。
「琉装は初でしたが、沖縄の伝統衣装でゲストの方を迎えられてよかったです」と笑顔の尚玄さん。アンバサダーとして開催前からピーアールに努めてきた中、国内外から駆け付けた映画関係者や来場者の楽しそうな表情に触れたことが、うれしかったという。
「改善点は多々ありますが、皆さまの笑顔で成功を実感しました」とすがすがしく話す尚玄さんは、出演作と共に世界各国の映画祭に出席し受賞も果たすなど経験豊富だ。
「多くの人からいろんな会話が生まれるのが映画祭の良さだと思っています。観客やゲストをはじめ、フィルムメーカーや映画の道を志す若い世代の方が双方向でやり取りできる機会を作りたいと考えていました。実践できたことがうれしいです」と、思い描いていた映画を介した人と人との交流や対話が実現する場になっていると感じたそうだ。
とりわけ、初対面だった高嶺剛監督の言葉に、感銘を受けたという。
「沖縄の風景に漂っているマブイ、戦争で亡くなった方のマブイ無しで映画は撮れません。マブイを逃さず、追い求めていきますというのが、監督の特別賞受賞のスピーチでした。僕自身が映画に携わっている中で大切にしてきたことを肯定いただいた気持ちになり、胸が熱くなりました」
映画で自分を知る
「初めての琉装で緊張し、高嶺剛監督へのプレゼンター役でもあったのでさらに緊張しました」とほほ笑む東盛さん。本映画祭では理事を務め、会議に出席し協賛先を訪問するなど準備を進めてきたという。開幕して特にうれしかったのが若い世代の参加。
「制服姿の子が会場内を案内して、気持ちよくあいさつするなど、若い方たちがボランティア・スタッフとして一緒に盛り上げてくれている。本当によかったと思いました」と語る。
「私にとってもこの映画祭は学びの場です。すてきな作品に出合え、国際的な映画関係者とお会いできる貴重な機会です。若輩者ですが、次世代にも映画の魅力を伝えたいので、ワークショップの開催を今後考えます」とのこと。
与那国島出身で、映画を学んだ大学の卒業製作作品『ばちらぬん』が日本の著名アワードでグランプリを受賞し、脚光を浴びた東盛さん。「映画を見ると自分を知ることができ、世界につながることもできる」という自身の体験を、彼女より若い人たちにも伝えていきたいそうだ。
来年秋は映画祭へ
今後も沖縄出身の映画人として活躍を続ける2人にメッセージをもらった。
「次作は与那国町と姉妹都市の台湾・花蓮市を描く映画を撮りたいと思っています。俳優としては、北海道が舞台の映画『馬橇(ばそり)の花嫁』に出演します。映画祭は来年に向け準備していきますので、注目してください」(東盛さん)
「年明けから海外撮影があり、公開を控えている作品が数本ありますので楽しみにお待ちください。映画祭には芝居をしたり、映画製作に興味がある若い子たちに積極的に参加してほしいです。いろんなチャンスがあります。来年も11月ごろに開催予定ですので、毎年この時期はどっぷりと映画につかって、飲んで語る一週間にしてもらえたらと願います」(尚玄さん)
(饒波貴子)
Cinema at Sea ―沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル
<次回は2024年秋開催予定>※情報はHP・SNSでチェック
https://www.cinema-at-sea.com
X(旧Twitter)@Cinema_at_Sea
(2023年12月21日付 週刊レキオ掲載)