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「私にしかできないこと」ろう者の可能性広げたい 豊見城市出身の俳優・大城桜子さん 映画「不死鳥の翼」出演 沖縄国際映画祭


「私にしかできないこと」ろう者の可能性広げたい 豊見城市出身の俳優・大城桜子さん 映画「不死鳥の翼」出演 沖縄国際映画祭 ろう者の俳優として、半生を振り返る大城桜子さん=16日、那覇市泉崎の琉球新報社(又吉康秀撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 20、21日開催の第16回沖縄国際映画祭で上映される「不死鳥の翼」(岸本司監督)に豊見城市出身の俳優、大城桜子(ようこ)さん(36)が出演する。大城さんは両耳が聞こえない。その中で、ミス・ユニバースや米国でのオーディションなどに挑戦してきた。「私にしかできないことで子どもたちの可能性を広げたい」と意気込む。

 1歳半の頃「滲出性中耳炎」で両耳の聴力を失った。3歳から相手の唇の動きを見て会話を理解する「口話」を習得。伊良波小、中学校で学び、沖縄ろう学校高等部に通った。

 20歳の頃、ろう者の可能性を広げようとミス・ユニバースに挑んだ。2回目に挑戦した2012年にファイナリストに選ばれ、その経験が俳優につながった。「俳優は音声ありきの仕事でろう者は少ない。でも自分にしかできないと思った」。

 だが、芸能事務所の対応は冷たかった。「障がい者はビジネスにならない」。次々に断られる中で渡米を決意。米国で受けたオーディションのモデル部門で合格した。「米国では耳が聞こえなくても“ウエルカム”。日本との差を感じた」。

 演技を学んで再び渡米しようと帰国して俳優養成所に通ったが、コロナ禍で仕事がない状態に。「これが最後」と応募したパラリンピックのボランティアに選ばれ、開会式に出演した。その後、ドラマのろう者役など出演機会が増えてきた。

映画「不死鳥の翼」に出演する大城桜子さん(右)(岸本司監督提供)
映画「不死鳥の翼」に出演する大城桜子さん(右)(岸本司監督提供)

 「不死鳥の翼」は20日午前11時40分、那覇文化芸術劇場なはーとで上映。主人公の幼なじみ役を演じる大城さんは普段は使わない手話を勉強して臨んだ。「アットホームな感じで撮影できた」。岸本監督は「大城さんは相手に伝えることにとても秀でている」と振り返った。

 大城さんは現在、耳の指定難病「遅発性内リンパ水腫」の闘病をしながら活動する。「一緒に映画を作り、世界に発信する仲間を探したい」と話した。

 (田吹遥子)