有料

宮本亜門が沖縄で「現代の共感呼ぶオペラを」 講演や実演指導 日本歌唱芸術協研修会


宮本亜門が沖縄で「現代の共感呼ぶオペラを」 講演や実演指導 日本歌唱芸術協研修会 オペラの現状や演出について語る宮本亜門=8月25日、那覇市のパレット市民劇場
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉手苅 友也

 日本歌唱芸術協会沖縄の研修演奏会が8月25日、那覇市のパレット市民劇場であった。演出家の宮本亜門が演題「世界のオペラの現状を含めて」で講演したり、実演の指導をしたりした。

 実演に取り組む協会の専門家会員らも舞台上で指導を受けた後に宮本との座談会に加わり、一般会員らが客席から見て学んだ。宮本は、世界でオペラ離れがあることを踏まえ「同じ作品の再演ではなく設定を変えて、現代人に(当時の人と)同じ人間なんだと感じさせる演出が必要」と語った。

 ひきこもりだったという高校時代、クラシック音楽に魅了された宮本は「音楽を視覚化したい」とオペラに興味を持った。20代でバックパッカーになり、現代の解釈で設定を変えるヨーロッパのオペラを学んだ。

 宮本が演出したモーツァルトのオペラ作品では、2001年の同時多発テロ後の米国に設定を変えた「ドン・ジョバンニ」や、日本のロールプレーイングゲームの世界観にした「魔笛」などが生まれた。

「フィガロの結婚」より二重唱「冷たいぞ、何故これまで」で(右から)伯爵役の西條智之、スザンナ役の金城真希、指導する宮本亜門=8月25日、那覇市のパレット市民劇場

 専門家会員による実演では、「フィガロの結婚」より二重唱「冷たいぞ、何故これまで」を、スザンナ役の金城真希、伯爵役の西條智之が演じた。場面は「侍女のスザンナに迫る伯爵を懲らしめようと、伯爵夫人と画策したスザンナが伯爵にほれたふりをし、逢引(あいび)きを約束する」。

 宮本は、演者が歌に集中しすぎているとして「音符が見えてしまっている」と指摘した。「観客は伯爵をどうほれさせるのかを見に来ている」と強調し、思わせぶりに手を握るスザンナの仕草(しぐさ)をより際立たせ、後半はだまし慣れていないスザンナの罪悪感が伝わるようにと助言した。

 実演後の座談会で、専門家会員の福田美樹子は「演出で自分の声色が変わった。演技の熱を帯びて変わるのが、人間の声の魅力だ」と指導の効果を実感していた。

 宮本はオペラ公演などをする東京二期会に才能のある県出身者が多いことを挙げ、「県内でオペラの上演数が少ないのはもったいない」とオペラの土壌が育つことを期待した。 

(嘉手苅友也)