オリオンビールはアルコール度数9%の「WATTA STRONG」(ワッタストロング)の生産を終了した。「今後も高アルコール飲料は作らない」としている。全国的に拡大しているストロング系チューハイ市場からの撤退の理由や今後の展開について早瀬京鋳社長に聞いた。
―ワッタ9%の生産終了を決断した経緯は。
「社長に就任してから世界保健機関(WHO)の出しているアルコールに関する文献だとか、ネット情報に目を通すようになった。その中で、高アルコール飲料がアルコール依存を助長しているという指摘を知った。個人的に思いを強くしたのは、アルコール依存症からの回復支援に取り組む団体の方から、ストロング系チューハイを1、2本飲んで寝ることが癖になり、依存症になっている人が多いという話を聞いたことだった。沖縄でこんな問題が起こっている。これは聞かなかったことにはできないと昨年12月には生産終了を決めた」
―社員の反応は。
「実はほとんど、もめなかった。みんなを笑顔にするためにアルコール事業をやっている。それは高アルコールじゃないといけないのか。それよりもわれわれなりの楽しく健康になれるお酒を考えようと話した。同時にライザップ社とのコラボの話も進んでいて、社員の中でつながったんだと思う。それならワッタのリニューアルもあるので、かじを切ることになった」
―ストロングはワッタシリーズの売り上げの4割を占めている。同業社は9%を売り続けており、ワッタの購買者が他社製品に流れるという懸念はないか。
「それは覚悟している。しかし、全員が9%を飲んでいるわけではない。ワッタで一番売れているのは4%。売れている理由はおいしさ、沖縄の良さ。だから9%という度数ではなく、違う価値に優先順位を付けていけば、お客さまのニーズに応えられる。売り上げを取りに行くとしても、他社も出している9%に勝つなら10%と切りがない。一方で、ハイボールはアルコール度数6~7%で売れている。その理由は糖質ゼロとか健康的とか、罪悪感がないお酒というアプローチだ。オリオンしかできないことに勝算がある。9%を飲んでいる人がわれわれを振り向いてくれる提案をしないといけない。ハードルは高いがそれはやるべきチャレンジだ」
―これだけ大きな決断をどこよりも速くできたのはなぜか。
「オリオンビールはベンチャー企業だと思っている。小回りが利く。判断に関わる人は四大メーカーと比べものにならないほど少ない。だから他社より判断は速くないとおかし い。オリオンビールの沖縄における影響力の大きさを考えると、アルコールと健康に関する課題が沖縄にあると分かっていながら、何もしないという選択肢はなかった」
(聞き手 玉城江梨子)