クレヨンしんちゃんと不発弾 アニメじゃない沖縄の日常(3)<アニメは沖縄の夢を見るか>


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挿絵・吉川由季恵

 本土のアニメに沖縄が登場する契機はさまざまだが、一番多いのはおそらく旅行で沖縄にやって来るというパターンだろう。修学旅行、観光、リゾート、出張に合宿、帰省などなど、アニメは繰り返し沖縄旅行の夢を描いてきた。テレビアニメやシリーズ化された作品では、マンネリ化を排するためにしばしば沖縄旅行の回が挿入される。あるいは劇場版スペシャルとして沖縄が舞台となるケースもあり、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』(2007)はその両方の要素を持っている。劇場版としてはシリーズ第15作となった作品だ。

 ハイビスカスにシーサー、そして青い海――沖縄にやってきた野原家は、早速ビーチでリゾート気分に浸っている。しんのすけは愛犬のシロと遊びながら、ビキニのお姉さんをナンパし始めた。ところがビーチには「ケツだけ星人」の爆弾が不発のまま落下しており、しんのすけをかばったシロの尻に装着されてしまう。野原家には奇妙なオムツとしか見えないが、爆弾は一発で地球を吹き飛ばすほどの威力があった。

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 国際宇宙監視センター(通称ウンツィ)は爆弾の回収に動き始める。そこへ宝塚風の美女テロ組織「ひなげし歌劇団」が介入して爆弾の横取りを狙い、那覇空港ではシロの争奪戦がくり広げられた。

 何も知らない野原家が埼玉の自宅に戻ると、ウンツィの長官が待ち受けている。長官はシロの尻から爆弾を取り外すよう部下に命じるが、地球の技術では不可能だった。

 すると長官はシロも爆弾といっしょにロケットで打ち上げる案に切り替え、野原家に好条件の取引を提示する。だがこれを拒んだしんのすけはシロを連れて逃げ出し、再びウンツィと歌劇団による追跡と争奪戦が始まる。

 本作が沖縄のビーチと不発弾の対比や、何も気づかぬまま帰って行く家族の姿に特別な意味を込めたかどうかは分からない。けれども沖縄には今なお無数の不発弾が埋まっている。統計によれば、2018年度の全国の不発弾処理件数は1480件だが、その45・6%を沖縄県が占めていた。沖縄戦がいかに激しいものだったかを物語る数字の一つだろう。テレビアニメ版の『GTO』(1999―2000)でも、沖縄の回にはビーチや安里屋ユンタ、ハブなどと並んで不発弾が描かれていた。

 1990年代以降の沖縄ブームの中で、沖縄らしさを表すパターンやスポットが類型化され、記号として流通してきた。だがそうした沖縄のイメージを重ねれば重ねるほど、不発弾はより深く潜り、75年前の記憶を抱えたまま眠り続けることになる。
 (岡山大学大学院非常勤講師)