沖縄県企業局が管理運営する北谷浄水場の設備改良事業を巡り、有機フッ素化合物(PFAS)の除去により特化した仕様とするため、総工費が当初予定の13億円から約16億円に引き上がったことが8日までに、分かった。北谷浄水場が取水源の一つとする米軍基地周辺の河川では、基地に起因するとみられるPFASの検出が問題となっている。同局の担当者によると「国内で、PFAS対策に特化した活性炭を導入している浄水場はほとんど聞いたことがない」といい、環境問題への対策や負担を強いられている。
PFOSなどの化合物を吸着する効果がある「粒状活性炭」による除去機能をより高めるため、当初の設備計画を変更し、活性炭の仕様設計にも約2カ月の遅れが生じた。
総事業費約16億円の3分の2(約10億6千万円)は防衛省の補助金で賄い、残り3分の1は水道料金を財源とする県企業局の予算から捻出する。
一方、北谷浄水場のPFAS対策に補助金を支出する沖縄防衛局だが、本紙取材に「防衛省としては米軍とPFOSなどの因果関係は現時点で確認されておらず、(県への)補償を行うべき状況下にあるという結論には至っていない」との見解を示している。
設備改良事業は2019~23年度の5年計画。高機能の粒状活性炭吸着池(吸着池)を設計した上で、現行の吸着池16池を、毎年4池ずつ最新のものへと取り換えていく。21年度は前年度に実施できなかった分も含め、8池を交換する予定だ。
県企業局の担当者によると、仕様設計に着手した当初は、発がん性物質のトリハロメタン対策として、既に導入している吸着池と同様のものと交換することを想定していた。
だが、国内外で水質に関するPFAS基準の厳格化が進む中、「よりPFOS、PFOAの値を低減させる対策が必要」と判断し、化合物の吸着性が極めて高く、高機能のものに切り替える計画に変更した。変更により初期投資額は増えるが、高機能化により交換頻度が抑えられるため、長期的には費用削減が期待できるという。
取水源とする河川にPFASが含まれることについて、県は米軍基地が汚染源である可能性が高いとして基地内の立ち入り調査を求めている。だが、16年1月に汚染が表面化して以降、立ち入り調査は一度も実現していない。
(当銘千絵)