【識者評論】コロナの税収減と歳出、今年度の市町村財政に負荷(獺口浩一・琉大教授)


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獺口浩一・琉大教授

 全国の市町村と同様に県内市町村は近年、高齢化による扶助費の増加や公共インフラの老朽化による投資的経費の増加、行政ニーズの多様化など、さまざまな行政課題に直面し、歳出規模が拡大する傾向にある。これまでの課題に加えて新型コロナウイルス感染症への対応を迫られており、財政的には非常に負荷のかかる状況だ。

 前年度は、新型コロナウイルス感染症に対する多額の対策事業を実施したものの、感染症まん延前の一定の好況な経済情勢を反映した税収を多くの市町村が確保できた。そのほか、国からの補助金や、減収補てん債の対象税目拡大など特例的な財政措置で対応し、財政調整基金の減少は最小限に食い止められた。

 しかし、本年度は、感染症まん延により経済活動がストップした前年度の影響が税収に現れる。引き続き国による財政支援が見込まれるものの、国の財政も非常に厳しい。前年度以上の財政調整基金の取り崩しが見込まれる。感染症まん延前より財政調整基金が減少する自治体もあるため、十分な注意が必要だ。

 感染症の今後が見通しにくい状況は続くが、その中でも財政の健全性をどう確保するか、行政は先んじて検討する必要がある。特に、拡大した事業や行政サービスの見直しと、行政サービスの効率化を進めると同時に、税収減や減収補てん債の発行などで将来の負担が増大しないような対応が求められる。
 (地方財政論)

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