【深掘り】玉城県政、正念場の夏 宣言再延長、病院クラスター…低下する知事の求心力


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 新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置移行を求めた県方針に反し、緊急事態宣言の再延長が決まった。延長によって宣言期間は、過去最長の3カ月間におよぶ。当初期限の11日が目前に迫る中で延長が決定したことに県民の落胆は大きく、経済界を中心に不満の声が県全体を覆っている。一方、玉城県政は県立中部病院の感染者集団(クラスター)の公表遅れなど、感染症対策での課題も表面化。自身も県議会文教厚生委員会に招致されるなど、求心力の低下も指摘される。コロナ禍で迎える2度目の夏は、県政にとって正念場となる。

8月22日までの緊急事態宣言延長を受け、県の対処方針を発表する玉城デニー知事=8日夜、県庁(代表撮影)

 沖縄の宣言延長決定の報道を受け、県には8日、産業界などから、延長撤回を求める要請が集中した。こうした経済界からの意見を受け、自民党の県選出国会議員らも政権幹部と面談するなど、方針撤回を求めて奔走した。

 

「沖縄も努力を」
 

 7日夜、沖縄の宣言期間を8月22日まで延長するとの報道が出ると、県選出自民党国会議員らは情報収集に追われた。8日昼には、重点措置の移行への方針転換を求めて加藤勝信官房長官と急きょ面談。しかし、政府判断が覆ることはなかった。加藤氏は、特に同じ離島県の北海道と沖縄の感染状況の違いを強調し、「北海道はここまで改善した。沖縄も努力してほしい」と求めたという。

 宮崎政久衆院議員は「経済も大事だが、県民の命を守るというのはもっと大切だ。リスクがある中での判断だった」と解説した。

 ただ、与党内には、専門家らが示す「3~4週間」という対策の期間の目安を超える緊急事態宣言の期間設定について、疑問を抱く声もある。与党関係者は「なぜ8月22日までなのか。オリンピックに合わせたのか。東京と足並みをそろえる意図がよくわからない」と首をかしげた。

 

意思疎通不全
 

 「ちょっと長いなと、正直そのように思う。8月8日まで辺りの延長は想定の範囲だった」。8日、玉城知事は、目安を超えた約6週間にもおよぶ延長期間は「想定外」だったことを明かした。

 国が県要請とは違う措置を適用することはこれまでも数回あり、県と政権とのコミュニケーション不全も浮き彫りとなった。だが玉城知事は「特に不都合とかお互いが対立してるとか、そういうことはない」と問題視しない姿勢を見せた。

 県は7月中の前倒し解除を目指す姿勢を打ち出したが、感染症対策で県政の手腕があらためて問われている。

(梅田正覚、安里洋輔)

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