「重症化しにくい」と言われていた子どもへの新型コロナウイルス感染拡大で教育行政が混乱している。県の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は23日、子どもの患者が急増している現状を共有した一方、学校再開を進める方向性を示した。25日の会見で、玉城デニー知事は9月1日以降の県立学校の原則分散登校を発表。一方、市町村教委は、県の判断を待たずに臨時休校を決めた所もある。デルタ株の猛威にさらされる子どもたちを前に、県と市町村教委の足並みはそろっていない。
県教委は18日、県立学校へ2学期始業時の分散登校を通知した。「専門家会議で夏休み延長に言及するはずだ。臨時休校の知らせを出し直すかもしれない」と、県の方針に淡い期待を寄せた。だが専門家会議で示されたのは学校再開の「ゴーサイン」だった。
萩生田光一文部科学相は21日の会見で「学習や発達の保障」を前提に、夏休み明けの「全国一斉の休校要請は考えていない」と発言した。県の専門家会議も再開の方向性を示した。
一方、従来は県の方針に準じることが多い市町村教委は8月中旬ごろから相次いで独自に夏休み延長を発表した。保護者や教員の強い懸念に背中を押された格好だ。ワクチンの接種対象は12歳以上となっている。対象外の児童を預かることから県の判断に頼らない自治体も出ている。那覇市は9月5日までの臨時休校を決めた。
本島南部の自治体の教育長は「小中学校は兄弟での登校も多く、県立学校のように分散登校は難しい場合もある」と話す。別の教育長は「今後も感染拡大が続く可能性もある。オンライン授業の整備を急ぐしかない」と述べた。
現場教員からは悲鳴が上がる。中部の30代教員は「消毒作業や臨時休校に備えた課題の準備など、仕事が多すぎる」と嘆息する。「感染拡大防止策は人の流れを抑えることじゃなかったのか。県はもっと強いメッセージを出すべきだ」と訴えた。
(嘉数陽)
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