アルバイト代を手に、生理用品を求めてコンビニに入った。「本当はこのお金も、家出資金に回したいのに」。毎月の生理用品代は自分のアルバイト代から捻出するしかなかった。たった数百円だが、決して安い出費ではなかった。両親は不仲で、父親は酒を飲んでは暴力を振るう。高校の先生や友だちには相談できなかった。家にいる時間を減らすため外で過ごすことが多かった。一人ぶらついていると、だんだん惨めな気持ちになった。
金城夕輝さん(22)=うるま市=は小学3年の頃から、父親から暴力を受けるようになった。家族がいないときを狙った暴力は、金城さんが21歳で逃げるように家を出るまで続いた。何度も死ぬことを考えた。手首には、絶望に苦しんだ深いリストカットの痕が残る。
「早く家を出たい」。高校でアルバイトを始めた。お金をためて家を出て、父親から離れて暮らすことが希望だった。アルバイト代は限られている。生理用品は交換回数を減らすなどして出費を抑えた。トイレットペーパーで代用したこともあった。夜、トイレで限界量を超えた生理用品を替える不快さと、ナプキンの用意さえままならないことに情けない気持ちになり、涙がにじんだ。「なんでこんなことに耐えなきゃいけないの」
結局、家を出るまで「生理の貧困」状態は続いた。金城さんはこれまでの経験から、現在は暴力に苦しむ人のためにシェルター(避難所)を運営している。利用者の中にはネグレクト(育児放棄)が原因で生理用品が不足した人、ナプキンなどを盗んでしのいだ人、生理期間中の不登校から引きこもりになった人もいる。金城さんは「親が経済的困窮者ではなくても、家庭内での孤立が原因で月数百円に苦しむ人たちがいる。背景には他人が気付きにくい深い問題があることを知ってほしい」と話した。
(嘉数陽)
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生理用品の購入や入手に困る「生理の貧困」。なぜ生理用品を入手できないのか。当事者の背景を取材した。
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