天然記念物のカメ2種を「人為的交配」か 沖縄で雑種発見、遺伝子汚染の可能性


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
那覇市で見つかったリュウキュウヤマガメとセマルハコガメの雑種=8月26日、那覇市役所

 国指定天然記念物のリュウキュウヤマガメとセマルハコガメの雑種とみられるカメが今年に入って沖縄県内で2匹見つかった。リュウキュウヤマガメは沖縄本島北部や渡嘉敷島、久米島、セマルハコガメは石垣島や西表島を本来の生息域としており、何らかの人の手が加わったとみられる。識者は人為的な影響で在来種の遺伝子が損なわれる「遺伝子汚染」が進むと警鐘を鳴らす。

 8月5日午後8時ごろ、那覇市首里末吉町の住民が「敷地内にカメがいる。リュウキュウヤマガメではないか」と通報した。安謝川が流れる末吉公園から数百メートルほどの駐車場でカメが見つかった。その後、沖縄こどもの国がリュウキュウヤマガメのような赤みがかった頭部や、両種の特徴がみられる甲羅などから、雑種の可能性が高いと判別した。

 同種の雑種は2018年9月に那覇市で、今年5月には宜野湾市で見つかった。県教育庁文化財課の新城憲一さんによると、「2、3年に一度の頻度で見つかる感覚」という。今年8月に見つかったカメは、大きさから10年弱は生きているという。

 天然記念物は文化財保護法で触ることが禁じられているが、密売の対象にされることがある。雑種に法的規制はない。今回見つかったカメが、販売用やペットが逃げたのか、すでに自然の中で生息していたのか、背景ははっきりしない。だが、新城さんは「いずれにせよ人の手によって自然界に本来いない生き物が生まれた。天然記念物を触らないで」と注意を呼び掛ける。

 沖縄こどもの国の金尾由恵さんによると、沖縄本島の在来種のカメはリュウキュウヤマガメのみだが、八重山諸島の固有種ヤエヤマイシガメなど外来種が本島内に多く生息しているという。沖縄こどもの国では、保護されたリュウキュウヤマガメとヤエヤマイシガメの雑種も複数匹、飼育している。金尾さんは「自然は歯車のようにつながっている。これが遺伝子汚染につながり、種が絶滅する可能性もある」と話す。

 今回見つかったカメは那覇市役所が、5月に宜野湾市で見つかったカメは新城さんがそれぞれ保護している。新城さんは自然保護の観点から密猟防止の勉強会で披露するなど、教育啓発のために活用する予定だ。


 

【関連ニュース】

▼とんだ「カメ」違い…脱走後に起こった珍事件

▼警察署に届けられた落とし物は…巨大なリクガメ!

▼1.7メートルの巨大「ヨウリンウミヘビ」を沖縄で確認

▼ピンクと黄色!「激レア」キリギリスを相次いで発見