小笠原諸島の海底火山噴火の影響とみられる大量の軽石が県内の海岸や港湾に漂着している問題で、県内に37ある漁業協同組合のうち、25日までに少なくとも14漁協で漂着による被害が出ていることが、県漁業協同組合連合会(県漁連)の聞き取り調査で分かった。このうち国頭村の辺土名漁港では25日、漁港内の海面に設置したいけすで蓄養しているグルクマ150匹以上が石をのみ込んで死ぬ被害が確認された。各地のビーチにも軽石が漂着、浮遊し、景観悪化やマリンレジャーの予約キャンセルなど観光面にも影響が生じている。
県漁連の担当者によると、現時点で深刻な被害が出ているのは国頭漁協だけだが、軽石の流れは風向きや潮流で変化するため、今後、被害がさらに広がる可能性があるという。
県は軽石漂着の状況調査を進めており、撤去方法など対応を検討している。担当者は、災害により漁業に実質的な影響が出ていると認められた場合、国の公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法に基づき対応できると指摘。「辺土名漁港については水産庁に状況説明し、調整している」とした。
軽石の漂着は9月下旬から10月はじめにかけて南北大東島で確認され、海流に乗って沖縄本島周辺に押し寄せている。当初は本島東海岸が中心だったが、時間の経過と共に西海岸でも確認されるなど県内全域に広がりつつある。軽石により漁船のエンジントラブルが懸念されるなど、操業への支障も出ている。
県漁連が20~24日に各漁協に被害状況を確認したところ、国頭、今帰仁、本部、伊平屋、伊江、恩納、勝連、与那城、佐敷中城、知念、港川、糸満、久米島、渡名喜の14漁協が、組合管轄内の漁港で軽石が確認されたと回答した。
国頭漁協の比嘉高志参事によると、辺土名漁港では通常約20隻の漁船が出入りするが、現在は港湾内に軽石が大量に滞留しており、18日以降は一斉休漁している。比嘉参事は「今の時期はシーラが盛んだが全く漁に出られない。1日推定約150万円の損失が出ている」と指摘する。漂着状況の見通しが立つまで組合員には操業自粛を促すという。
モズクの一大産地であるうるま市の勝連漁協職員の大城克男さんは「3月の収穫に備え、11月から養殖網を張る作業が始まる。大量の軽石が海面を覆い尽くせば、モズクに十分な栄養が届かない可能性もある」と懸念した。 (当銘千絵)
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