【北部】県内各地の海岸に大量の軽石が漂着する中、その軽石が35年前に漂着した軽石とほぼ同じ特徴を持つことが分かった。1986年に調査した琉球大学名誉教授の加藤祐三氏(82)が両方の軽石を見比べ「詳細な成分分析はしていないが、灰色で黒いごま状の粒があるなど特徴が一致しているので同じマグマ由来だとみて間違いないだろう」と指摘した。
軽石は8月中旬に沖縄本島から東に約1400キロ離れた小笠原諸島・硫黄島近海の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火が原因とみられる。
35年前にも今回と同じ福徳岡ノ場で噴火が発生した。同様に黒潮が南側に弧を描いて戻ってくる「黒潮反流」に乗って、噴火発生から約4カ月後に沖縄各地の海岸に軽石が大量に漂着した。
10月に国頭村安田の海岸に漂着した軽石と、自宅に保管していた86年に本島南部の海岸に漂着した軽石と並べて観察した加藤氏は「軽石にはそれぞれ特徴がある。35年前の軽石と同じく、灰色で黒い小さな石を抱くような軽石だ」と指摘。「マグマの寿命は短くても何千年とされる。『同じ顔』と断言できるほど似通っているので、同じような周期で発生している福徳岡ノ場の噴火によるものだろう」と分析した。
軽石は5~10年ほどで海に流されるか沈むかして、ほとんど海岸沿いから見えなくなるという。
今回は8月16日に噴火が発生し、南北大東島などに10月上旬に軽石が漂着した後、本島北部の東海岸、南部の海岸、北部の西海岸と本島を時計回りに回るような経路で相次いで漂着した。渡嘉敷村や久米島町などでも確認されている。
18日には古宇利大橋を望む絶景スポットの名護市の屋我地島の北の砂浜にも漂着が確認された。近くの駐車場で移動店舗を営む50代男性は「最初は違う種類の砂をまかれたのかと思った。不気味で人体などに害があるのか気になる」と懸念する。
加藤氏は「86年の軽石は黒潮反流に乗って約4カ月で沖縄の東海岸、南部、西海岸など至る所に流れ着いた。今回は台風の接近が相次いだことで潮流が早くなり、わずか2カ月で流れてきたと推測される」とした。
さらに「噴火のすぐ近くなら一時的に魚がすみづらい環境になるだろうが、流れてくる軽石には何も害はない。これほどたくさんの軽石が流れてくる機会はめったにないので、自然や科学に親しむ機会になるのではないだろうか」と話した。
(松堂秀樹、長嶺晃太朗)
【関連ニュース】