第71回県高校野球秋季大会は、興南が11年ぶり9度目の優勝で閉幕した。準優勝の前原と共に出場する第149回九州地区大会(11月6~12日、鹿児島県)の組み合わせ抽選会が29日、鹿児島市内で行われる。九州大会開幕を前に、興南と前原を中心に県秋季大会を振り返る。
■投打かみ合う興南、勢い付く前原
興南は、1年生選手の台頭が目を引いた。急成長を遂げたのは、左腕の平山航多。準決勝の沖縄水産戦は、四回から登板し延長十四回に及ぶ死闘を要所で抑え、チームに勝機を呼び寄せた。低めに集める制球やギアの上げ方が巧みで防御率は1・3。1年で唯一、4月の春季九州大会でスタメン入りした仲程雄海は今大会からリードオフマンを任され、大役を全うした。打撃では、どこからでも得点につなげられる打線で、投打がかみ合うチームに仕上がっている。
一方、前原は守りでエース・横田琉空、攻撃は主砲の新里紹舜が結果を残した。横田は縦に落差のあるスライダーなどを武器に準決勝で完投。内野陣の堅守も味方した。打撃では、新里が広角に打ち分けるバットコントロールで打率6割。打線も勢いに乗り出すと止まらず、打者一巡し一気に勝負を仕掛ける場面があった。
北山との順位戦を制した沖縄水産は、主砲の知念琉月が今大会3本塁打でチームをけん引。劣勢から打撃でゲームをひっくり返すなど、終盤の粘り強さは目を引いた。
北山は、エースの知念夢翔が全試合完投。準々決勝の沖縄尚学戦は被安打6、1失点に抑え流れをつくった。打撃では単打や犠打が多かったが、着実に返す攻撃で4強に上り詰めた。
■目立った実力差
今大会、特に目立ったのはコールドゲームだ。昨年は新型コロナウイルスの猛威で、県内大会が相次いで中止。今大会に出場するチームは、対外試合や練習も制限され、実戦経験が圧倒的に少ない状況に置かれていた。コールドゲーム数は36試合(うち1試合が降雨コールド)で前回より12試合多かった。投手の調整不足や中継プレーミスなどが勝敗に大きく影響し、ワンサイドゲームも目立つ大会となった。
その中で、決勝に進んだ興南と前原はともに制球力の良い投手を擁し、失策数も他チームよりは少なかった。打撃力も備わり総合力で勝っていたことをうかがわせた。一方、九州大会は、沖縄より経験が豊富なチームとの対戦は明白だ。守りでは一瞬の気の緩みからつながる失策や失点を減らし、流れを変える好守が期待される。打撃では、頼りになる主砲を前に、走者をためて好機を演出できるか。2校の奮闘に注目したい。
(上江洲真梨子)