「結果については当然、厳粛に受け止めたい」
衆院選の投開票から一夜明けた1日午前、沖縄選挙区で「オール沖縄」勢が改選前から1議席を減らした選挙結果について、玉城デニー知事は直接的な評価を避け、多くを語ることはなかった。
開票作業が進んだ10月31日は当初、沖縄3区で自身の後継である屋良朝博氏(立民)、オール沖縄共同代表でもある4区の金城徹氏(立民)のいずれかの選挙事務所を訪れる予定だった。しかし、両氏ともに落選。この夜、玉城氏は知事公舎にこもり、報道陣の前に姿を見せることはなかった。
衆院解散を目前に金秀グループが不支持を明確にするなど、オール沖縄体制から保守・経済界の離脱が続き、組織の弱体化を指摘されながら突入した今回の選挙戦だった。
玉城知事は公示前後から自ら支援を強め、中盤以降は接戦区とされた3、4区を中心に頻繁に選挙区入りし、マイクを握った。ただ、県政の実績や候補者の能力を街頭でアピールする一方で、旗印である辺野古新基地建設反対や自公政権との対決姿勢を鮮明にすることは少なかった。
今衆院選で「オール沖縄」4候補が獲得した総得票数は、自民公認4氏の総得票数を下回った。故翁長雄志氏が2014年の県知事選で当選して以来、全県区で初めての事態だ。
自民党県連幹部は「オール沖縄は翁長氏の強いリーダーシップあっての組織だった。もはや革新共闘でしかない。来年の知事選まで頑張る」と息巻いた。
金秀会長が自民支援 経済界の離脱鮮明
衆院選が公示されて最初の週末を迎えた10月23日、沖縄1区に出馬した国場幸之助氏=自民=の選挙事務所に、元自民党副総裁の山崎拓氏を案内して、県内経済界の有力者が姿を見せた。金秀グループの呉屋守将会長だった。
呉屋会長は経済界の側から翁長雄志県政の誕生に尽力し、玉城デニー知事の後援会長も一時は務めた。だが、今衆院選を前に「オール沖縄」勢力からの離脱を鮮明にした。
その際の取材に呉屋氏は「(辺野古反対の民意は)県民投票で十分伝わっている。経済団体が長く政治のステージで闘うわけにはいかない。経済界に与えられた役割は、もっと沖縄の経済力を付けることだ」と語り、今後は保守・中道にグループに立ち位置を戻して自民候補を支援することにも言及していた。
選挙中は表に出ることを控えていた呉屋氏だったが、「顔が見える支援」を求めた国場陣営幹部の要請に応じての選挙事務所訪問だった。国場氏周辺は「支援が票につながったかどうかは関係ない。『オール沖縄』が崩れていることをアピールできることが重要だ」とほくそ笑む。
オール沖縄は足元の連携でもがたつきを露呈した。
保守系無所属の市町村議員でつくる「にぬふぁぶし」の代表を務めた金城徹氏は、今衆院選で立憲民主党の公認を得て沖縄4区に立候補した。各種調査から追い風ムードにあったが、結果的に約1万5千票の差で敗れた。支援者は「党の支援が全然なく、ほとんど応援にも入らなかった」と不満をぶちまけた。
立民県連側にも不満が渦巻いていた。保守・中道に食い込む候補としてオール沖縄の選考委員会が金城氏に白羽の矢を立てたが、立民での実績がないまま公認された経緯に「党の看板と比例(復活枠)がほしいだけだろう」(立民関係者)と不信感を募らせた。「(立民県連代表の屋良朝博氏が立候補する)3区のビラ配りの人さえいない」というほどの県内における組織の脆弱(ぜいじゃく)さも相まって、双方が溝を深めた。
1日午前の報道陣への対応で玉城知事は「辺野古反対の県民は依然として多い」と強調し、辺野古新基地建設反対の旗印の下に結集したオール沖縄の弱体化も否定した。これに対し、与党県議は「玉城知事は政治家として辺野古の訴えが有権者に響いていない。各党もオール沖縄の名前への依存から脱却し、足腰を強くする必要がある」と危機感を強めた。 (’21衆院選取材班)
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