岸田文雄首相が衆院選期日を示した3日後の10月7日。衆院選沖縄3区に出馬する島尻安伊子氏=自民=の陣営関係者は恩納村内のホテルで、屋良朝博氏=立民=の陣営幹部に名を連ねる「会派おきなわ」の平良昭一県議と、新垣光栄県議らと仲介者を同席して向き合い、選挙協力を訴えた。
屋良氏との不和が半ば公然の事実とされる平良氏へのアプローチ。「立場もあるので断った」(平良氏)と寝返らせることは不発に終わったが、島尻陣営は選挙戦に向けて相手陣営幹部さえも取り崩して引きずり込もうと、なりふり構わない姿勢をのぞかせた。
2019年4月の衆院補選では、屋良氏に1万7728票差で敗れた島尻氏。およそ9年にわたり沖縄政策を差配した菅義偉前首相に重用された島尻氏は当時、名護市辺野古の新基地建設計画を進展させたい政権の思惑が絡んだ事実上の「落下傘候補」だった。だが地元との距離感を払しょくできずに大敗を喫した。
この2年余り、島尻氏は「政権の使者」から「地元の政治家」への転換を図るため、本島中北部、離島にまたがる広大な選挙区をくまなく回った。市部だけでなく郡部の小さなイベントや集まりにも顔を出し、草の根活動を広げた。
今選挙戦では、公明党とのセット戦術を他の自民候補陣営よりもいち早く展開し、市町村の隅々にセット戦術の徹底を浸透させた。結果として、3区で17年の前回選挙から約1.3倍の公明比例票を積み上げた。公明関係者は「熱量が違った」とほおを緩める。
選挙戦途中、自民の情勢調査の対象から外れるなど劣勢も一時伝えられた。選挙組織の歯車がうまく回る一方で、調査の数字に手応えが表れないことに「上滑りしてないか」(陣営幹部)との懸念も渦巻いていた。最終盤には企業の引き締めをより一層強めた。
その結果、選挙区内14市町村のうち票田の沖縄市、うるま市、名護市を含む12市町村で屋良氏の得票を上回り、7214票差を付けて雪辱を果たした。
「『チーム安伊子』の勝利です」。31日夜に報道各社が当選確実を報じた後、島尻氏が選対本部に集まった支持者の前で気勢を上げると、割れんばかりの拍手が事務所を包んだ。 (’21衆院選取材班)
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衆院選で「オール沖縄」勢力は沖縄3区を落とし、自民と選挙区を2議席ずつ分け合う形となった。舞台裏や今後への影響を探る。
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