玉城知事の発信力強み失う 辺野古反対の民意に変化は?<記者が見た衆院選>


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屋良朝博氏(左から2人目)の応援に駆けつけマイクを握る玉城デニー知事(中央)=10月19日午前、沖縄市知花

 琉球新報は3日、今衆院選の取材に当たった衆院選取材班6人による記者座談会を開いた。選挙期間中の裏話や、今後の県内政局の展望などを現場からの視点で切り取った。
 (’21衆院選取材班)

<県政影響>知事発信力 強み失う/政府、予算で揺さぶりも

 C 玉城知事が3区の候補者の応援演説で辺野古新基地建設の問題に触れなかったと、陣営内からも不満が出ていた。国との裁判などで揚げ足を取られることを恐れている可能性があるが、与党県議からは腰が引けていて知事の言葉に力がなくなっているとの声もあった。

 A 知事に当選した直後は発信力が強みだった。今や、その強みを失っている。玉城知事が応援演説に入っても「客寄せの効果しかない」との声も「オール沖縄」陣営内から上がっていた。

 E 政府の冷遇が続き、その対応策を練ることに終始した3年間だっただろう。姿勢を評価する県民も多い。ただ、知事を含め県三役は、もっと現場に下りていくべきだ。子どもの貧困などの厳しい課題への取り組みが弱くなったとの指摘もある。総花的な政策を続けることが逆に支持離れにつながっていないか。

 D 今回引き分けになったことで、政府は予算増減などで、より県に対して強気で揺さぶりを掛けてくるのではないか。

 A 政権与党の自民から沖縄担当相を含む4人の当選者が出ている。年末に編成される来年度沖縄関係予算案がどうなるかに注目したい。

 B 政府が予算などで揺さぶりを掛ければ掛けるほど、自民党の県関係国会議員は、逆に支持者から見放されることにつながるのかもしれない。政権与党内でも、しっかりと沖縄の視点に立って政府交渉を進めてほしい。

<知事選・名護市長選展望>立て直し急務 オール沖縄/連携奏功弾み 自公

 B 3区は名護市の得票も自民候補が上回った。国政と首長選の争点は違うというのは与野党ともに一致したところではあるが、やはり自民の追い風になる。

 A 自公連携が最も良い形で発揮されたのが3区ということを考えても、「オール沖縄」は早急に組織体制や戦略を見直さないといけない。自公のかみ合った協力体制は、2018年の名護市長選を思わせる熱があった。

 D 島尻氏の名護市の事務所は、既に年明け1月の名護市長選に向けた事務所に衣替えしていた。勢いはそのままといった雰囲気で、今回の議席奪還で大きな弾みが付いている。渡具知武豊名護市長も衆院選期間中から活発に動き、さながら自身の「選挙運動」に走り出している。

 F 一大決戦は知事選だが、玉城知事の求心力を再度高めることができるのかが気になるところだ。就任3年で「公約達成率が約1・7%」という記事が載ると、波紋を呼んでいた。

 C 知事選は来年秋ごろの予定だが、これから政治日程がめじろ押しだ。直近で今月21日投開票の北谷町長選もある。「オール沖縄」側は勝利を積み重ねていかないと、これまでのように「反対の民意」を盾としたうねりをつくり出すことが難しくなる。

 E 組織が大きく、党内で疑似政権交代を演出できる自民に比べて、野党共闘は政党の論理がぶつかって、まとまりづらい。同様のことが「オール沖縄」にも言える。知事選に向け辺野古一辺倒との指摘をどう克服するかが問われる。


[座談会参加者]

 池田哲平(政経グループ)▽大嶺雅俊(同)▽中村優希(同)▽明真南斗(同)▽喜屋武研伍(北部報道部)▽當山幸都(暮らし報道グループ)


 

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