「最悪のシナリオ」下地氏、得票減で崩れた戦略 1区の保守分裂<2勝2敗の舞台裏>3


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落選が確実となった下地幹郎氏(中央)を激励する国場幸一氏=10月31日、那覇市牧志の選対本部

 衆院選投開票日5日前の10月26日、那覇市の県民広場近くで開かれた1区の国場幸之助氏=自民=の総決起大会に、帽子を目深にかぶり演説を見つめる建設業の男性がいた。「誰か偵察に来ているかもしれないからばれないように変装して来た」と話し、支持者らの人混みに紛れた。

 その数日前、1区で下地幹郎氏=無所属=を支援する県内大手の大米建設から電話を受け、同じ時間帯に開催される下地氏の総決起大会に参加するよう促された。男性は自民候補を支持しているが、取引先である大米建設や、下地氏支援の先頭に立つ県内建設業最大手、国場組の国場幸一会長ににらまれることを恐れ、人目を忍んで来たという。

 1区を巡っては、国場会長が代表を務め、一部の経済関係者で構成する「保守合同を実現し沖縄の未来を創る会(保守合同の会)」が、下地氏の自民党復党を求めてきた。だが自民党県連は復党を認めず、三つどもえで選挙戦に突入した。

 元請けと敵対したくない建設業者らは板挟みとなった。表立っては動きづらい状況の中、幸之助氏支持の30社ほどが選挙前から声を掛け合って「裏選対」を結成し、水面下で活動した。

 

 復党もつれ業者板挟み

 公示日前日の18日に、県建設業協会の政治団体「県建設産業政策推進連盟」が、提出を見合わせていた自民党公認候補への推薦状を出したことが“錦の御旗”となり、ようやく1区の関係者も選挙活動に本腰が入った。だが体制固めに後れを取り、「前回選挙と違って盛り上がりや機動力は3分の1程度」(建設関係者)だった。

 一方の下地陣営も、保守合同の会のメンバーらが中心となり気勢を上げたが、広がりは限定的だった。保守合同の会に参加した関係者は「保守合同には賛成だが、下地氏の後援会になるのはまた違う話だ」と距離を置き、自民候補の選挙活動に精を出した。

 投開票日の31日夜、那覇市牧志の下地氏の選対本部では、落選が決まった下地氏は「国場会長が掲げた(保守合同の)旗はまだ道半ばだ。政治のど真ん中に必ず行く」と語り、前を向いた。

 共に開票速報を見守った国場会長は結果を受け「(保守が)まとまらないと勝てないという結論がはっきりしたという意味では、保守合同は前進した。県連の方からアプローチがあるはずだ」と強調した。

 ただ、下地氏の得票は前回、前々回選挙の3万4千票より4千票余り減らした。落選しても幸之助氏より得票で上回り、影響力を高めるという当初の戦略は崩れた。幸之助氏が落選の場合は自民の空白区となる1区で公認権争いに再度加わろうというもくろみもあったが、幸之助氏の比例復活当選で霧散した。下地陣営の幹部は「最悪のシナリオだ」と頭を抱えた。

 同幹部は、基礎票とみていた3万4千票から得票を減らしたことについて、自民復党を目指す動きが公示直前までもつれた影響で、これまでの反自民・非共産の受け皿としての役割が薄れたと分析する。

 その上で「自民復党は99%ない。下地氏が生き残るには無所属として腹をくくり、『それでも下地氏が必要だ』ということを浸透できるかどうかだ」と強調した。

('21衆院選取材班)

 


 

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