公明、協力前倒し強化 自民、知事選へ反転攻勢<2勝2敗の舞台裏>4


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当選確実が報道され、花束を掲げる自民党の西銘恒三郎氏(右)と公明党の金城泰邦氏=10月31日午後11時20分ごろ、南風原町の選対本部

 「これで落選しそうな大臣から外れました」

 衆院選沖縄4区に出馬した沖縄担当相の西銘恒三郎氏=自民=は10月31日夜に当選を確実にした後、集まった支持者の前で冗談めかしながら、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 前回選挙では、「オール沖縄」候補に対して1勝3敗を喫した自民党。議席回復を期す中、その大前提は前回唯一勝利した4区の堅持だった。もともと選挙区は保守地盤の上、相手候補の金城徹氏=立民=は選挙区内に地盤を持たない新人という優位な条件だった。

 だが、前回選挙以降、選挙区内5市のうち、保守分裂などの影響で4市の首長が非自民系となり、求心力が低下していたことで、事前の情勢調査では厳しい状況が伝えられた。そんな中、西銘氏に舞い込んだのが「大臣職」だった。

 就任後から企業や経済団体などの「事務所詣で」も活発化し、一時は楽観ムードも漂った。だがそれでも情勢が想定よりも改善しなかったことに自民側は危機感をさらに強め、区外からの企業投入による期日前投票での支持固めなどでてこ入れを図った。

 結果は選挙区内11市町村全ての得票で金城氏を上回り、1万5千票差を付ける圧勝。ある陣営幹部は終盤に掛けての手応えは、接戦を伝える調査内容とは異なる感触だったとする一方でこう語った。「大臣になっていなければ、相当厳しかった」

 各選挙区で苦戦や接戦が伝えられる中、自民陣営を支えたのが、連携強化を図る公明党の動きだった。

 公明は比例九州ブロック単独で県出身の金城泰邦氏を擁立していることを背景に、従来は公示前後から本格化する自民との選挙協力を、5~6月ごろから前倒しで始動。自民候補者と公明の間に自民県連が立つ仕組みから、陣営と公明側が直接やりとりする仕組みに変え、陣営と支持母体・創価学会の地域組織が一体的に動ける体制を整備した。

 公明は今回、比例で過去最多得票となる12万9467票を獲得。公明幹部は「今後の選挙でも協力を強めていきたい」と強調。自民側も歓迎する。

 自民は選挙区で2勝し、選挙区で落選した2氏も比例復活を果たした。4候補者の合計得票数でも、対峙(たいじ)した「オール沖縄」勢を上回った。「パーフェクトではないが合格点」(県連幹部)。来年の知事選での県政奪還に向け、反転攻勢を掛ける起点となった格好だ。

 同幹部は、公明との選挙協力の深化や、新型コロナウイルスの影響で名護市辺野古の新基地建設計画が争点としてぼやけたことが“勝因”だと分析する。

 知事選勝利への道筋ができたとの認識を示しつつ、基地問題を巡る政権への厳しい視線は県民感情の底に流れているとの見方を示す。「一度火が付けばマグマのようになる。知事選を取るのはそんなに簡単な話ではない。首長選を一つ一つ押さえ、体制を強化していくしかない」と表情を引き締めた。 (’21衆院選取材班)


 

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