宮古島市平良島尻の長墓遺跡周辺から出土した先史時代の人骨と、日本の縄文時代の人骨はDNAのゲノム(全遺伝情報)が100%一致するとの結果を含む研究論文を、ドイツのマックス・プランク人類史科学研究所を中心に沖縄を含む日本や韓国、中国、米国などの研究者42人が共著で11日までにまとめた。従来、宮古島の先史時代の人々はフィリピンや台湾など南から渡ってきたとする「南方説」が有力だった。今回のゲノム解析結果は沖縄島など北から渡ってきた可能性を示しており、今後の研究の進展が注目される。
論文名は「トランスユーラシア言語が農耕と共に新石器時代に拡散した―歴史言語学、考古学と遺伝子の学際的研究成果」。日本語、琉球語、朝鮮語、モンゴル語などを使う人々の移動経路を研究し、英科学誌ネイチャーで発表した。
長墓遺跡は2005年から発掘調査を実施して、先史時代の人骨や装飾品などが見つかった。出土した人骨のDNAを解析し、今回の論文にまとめた。
論文は新石器時代に中国の西遼河地域でキビやアワを栽培した農耕民を起源に、農耕や言語が朝鮮、九州を経て沖縄へ伝わったことを想定する。論文共著者の鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの高宮広土教授=那覇市出身=は「琉球列島の方言と人の起源が明らかになり、農耕の変遷時期も分かった。人骨や農耕による穀類などデータをさらに蓄積することも必要だ」と指摘した。
同じく共著者で、宮古島市教育委員会文化財係の久貝弥嗣さんは「宮古の先史時代の人骨をDNA分析したことはなかった。日本の遺跡から出た人骨のDNAと比べる新しい視点が入ってきたことは大事なことだ」と指摘した。
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